活動レポート

第4回 あいち/「豊・食・人 GEN-B」交流会 in 瀬戸

「 “練りもの”と“やきもの”が結ぶ、三河と尾張の食文化を体験」

開催日 2021年 11月20日(土)14時〜18時終了

土の練りものの話とろくろ体験〜すり身の練りものの話〜お食事

お話 喜多窯 霞仙 十二代当主 加藤裕重
http://www.kasen-web.com/

ヤマサちくわ株式会社
七代目 代表取締役 佐藤元英
https://yamasa.chikuwa.co.jp/
場所

喜多窯 霞仙 工房&ギャラリー 

愛知県瀬戸市赤津町71番地 電話:0561-82-3255

日本六古窯のひとつとして日本遺産に! やきもののまち「瀬戸」の赤津にて開催。

 1300年以上ものやきものの歴史を持つ愛知県瀬戸市。越前・信楽・丹波・備前、そして同じ愛知県の常滑と並ぶ「日本六古窯」のひとつとして、2017年に日本遺産にも認定されました。

● 「旅する、千年、六古窯」公式サイト

 瀬戸市東部の山間にある赤津地区は、江戸時代、尾張徳川家の御用窯が置かれた地として知られ、茶陶を中心に地元の素材と伝統に技術を生かしたやきものづくりが受け継がれて来た地です。
 中でも名古屋城のお庭焼きとして生まれた「御深井(おふけ)」をはじめとする、赤津焼伝統の七釉(ななゆう)で彩られた作品は、昭和52年に「赤津焼」の呼称で通産省「伝統的工芸品」に認定。現在も約40軒の窯元がその技術を絶やすことなく、時代に合った新しいやきものづくりに取り組んでいます。
(喜多窯 霞仙 HPより)

● 赤津焼

 この赤津にて360年続く『喜多窯 霞仙/KASEN』は、伝統を踏襲したやきものから瀬戸の特徴である多彩な釉薬を活かし、現代の食卓になじむ器まで幅広く手がける全国的にも人気の窯元。工房にはギャラリーショップを併設、陶芸体験やワークショップはもとより、平常時は国内外からのアーティスト・イン・レジデンスも積極的に受け入れています。
 当代12世の加藤裕重さんは、快活でチャレンジ精神旺盛、自らも積極的に海外での陶芸指導等に赴き、昨今ではオンラインを通じてもグローバルに瀬戸のやきもの文化を発信し続けています。

◆加藤裕重 / 喜多窯霞仙(かとう ひろしげ / きたがまかせん)
1959 愛知県瀬戸市赤津町生まれ
1983 明治大学卒業後 家業の霞仙陶苑に入る
祖父 仙左衛門 、 父 霞仙に師事
1998 赤津焼窯元 喜多窯 12代当主を受け継ぐ

日本各地はもとより、アメリカ・メキシコ・オーストラリア・フランスなど国内外で個展や陶芸指導を行う。現在、名古屋学院大学 非常勤講師も務める。

土を練る、すり身を練る、そして焼く! ろくろまわる陶房が、美し皿ならぶ食房に。

 今回瀬戸・赤津でのGEN-B交流会の開催は、ヤマサちくわ株式会社 7代目 佐藤元英社長と加藤さんとの青年時代のご縁から。2021年7月、豊橋駅ステーションビル『カルミア』内のヤマサちくわ直営お惣菜店舗『三味』がリニューアルをした際、店舗壁面に飾る陶板を加藤さんに依頼。佐藤社長が赤津を訪れ、数十年ぶりの再会で意気投合したことで実現しました。

 ちなみに陶板の図柄は、豊橋のヤマサちくわ魚町本店に隣接する「安海熊野社(やすみくまのしゃ)」が所蔵する能衣装の「蒲公英(たんぽぽ)」文様がモチーフとなっています。

 昨今の情勢を鑑みて開催時期を度々調整、晩秋にようやく定員数制限と感染症予防対策の徹底のもと、待望の「豊・食・人 GEN-B交流会 in 瀬戸」が開催されました。

 今回のテーマは、「尾張三河の練りもの・やきもの」。まずは瀬戸・赤津焼に関するお話・ろくろ実演の後、加藤さんの指導のもと、“土の練りもの”としてろくろでの器づくりを体験。その後は佐藤社長にバトンチタッチして、“すり身の練りもの”の歴史や日本古来の魚食文化についてレクチャーがあり、GEN-B恒例!佐藤社長によるすり身〜ちくわ巻きの実演〜炭火でのちくわ焼き体験へ!

 お料理は、ヤマサちくわ直営のおでん専門店『広小路・でんでん』より、山下隆之総料理長が心をこめてご用意。すべて霞仙の器とともに、お料理に合わせて各種お酒も取り揃え、「尾張の器で東三河の料理とお酒」を楽しむ “窯場レストラン”となりました!

 瀬戸でもまたとないユニークなコラボ企画とあって、遠くは関東から、名古屋やその近郊、そして地元瀬戸からもメディア関係、若手陶芸家など、多彩な顔ぶれが久しぶりに一堂に集いました。

あざやかなろくろの手技に感嘆の声! 瀬戸の土に触れ、創作する楽しさを満喫。

 ろくろ体験に先駆け、まずは加藤さんから瀬戸・赤津焼の紹介やお手本となる実演を披露してもらいました。まずはやきものづくりの大切な工程「土練り」。粘土の堅さにムラ・気泡などがあると、切れ・割れにつながりかねません。「荒練り」で粘土の堅さを均一にし、「菊練り」で土の中の気泡を押し出し、状態を整えます。

 加藤さんが手元を回転させながら粘土を練り込んでいくと、みるみる菊花のような美しいひだが現れます。ここで「ほぉ〜」と感嘆の声。

 「どなたか、やってみます?菊練り3年ロクロ10年って言ってね、すぐにはうまく練られないものだけど…」という加藤さんの呼びかけに、すぐに手を挙げた参加者が早速トライ。意外にもなかなか上手な手つきで、「あれあれ、できるね、うまいねー!(笑)」と加藤さんも拍手。

 ろくろの実演では、加藤さんの手の中で粘土の塊がするするとあっという間に器の形になっていく様子に歓声!パーツの多い急須も、ものの数分で完成してしまう熟練の技に圧倒されました。

 工房に並ぶ5台のろくろを使い、いよいよみなさんの体験がスタート!手に収まりやすい土の量で、湯呑または小鉢をベースに電動ろくろで成形をしていきます。「昔一度体験した」という方から、粘土に触れるのもろくろも初体験!という方まで、3チームに分かれ、加藤さんが一人ひとりまさに手取り足取り、アクティブに駆け回って細やかに手ほどきをしてくれます。

 それぞれに美しいろくろ目の器が仕上がりました!瀬戸のやきものの特徴的な釉薬の中から好みの色を選び、オーダー用紙に記入したら完了。窯元で日干し、施釉、焼成をしてもらいます。1ヶ月後、どんな風に仕上がるか、ワクワクしながら待つのも陶芸体験のお楽しみです。

すり身に最適な白身の魚を、昔ながらの製法で練りものに。 豊かな水、東海道の地の利が生んだ豊橋名産。

 続いては、ヤマサちくわ株式会社 佐藤社長が、江戸時代の創業からのちくわの歴史や、「鉛は金に変わらない」という自社のモットーを物語る本物のすり身を使ったちくわの美味しさの秘密などについて、スライドを使いながらレクチャー。
 「機械で攪拌する」のはなく、産地から届く魚を自社で職人がさばき、昔ながらの御影石の石臼を使ってすり身にし、「練りもの」にするという、ヤマサちくわの昔ながらの伝統の製法に、「だから美味しいのかあ」と呟く声も。

 「豊橋はもともと吉田宿と言って、東海道五十三次で江戸日本橋から34番目の宿駅として東西の交通、交流の盛んな地でした。また、長野方面には塩の道が続き、海産物を塩蔵して運ぶというちくわの原点にもなっています。
 豊川という豊かな水量の河川にも恵まれていたことから、豊橋という名称になったと言われていますが、この水の豊かさと地の利の良さがあったから、ヤマサちくわが今日まで継承できたとも言えます」。

● ちくわ・ヤマサちくわの歴史

 「地球温暖化など環境の変化は、ちくわづくりにも影響していますか?」という質問には、「水温の変化で魚の獲れる地域がどんどん変わってしまうので、やっぱり大きな影響がありますね」と佐藤社長。昔から主に西以南の魚食文化と言われてきた練りものの歴史も、今後は魚種なども含めて少しずつ変化していくのかもしれません。

オープンエアーでの焼きたてちくわの味は格別! 三河の料理と尾張瀬戸の器のコラボレーションを堪能。

 お待ちかねのちくわ炭火焼体験は、工房とギャラリーショップとをつなぐ、屋外テラスに焼き台をセッティングし、秋の風を感じながら楽しんでいただきました。

 佐藤社長自らが竹の棒にすり身を巻いて、鮮やかな包丁使いでちくわに仕上げては1本1本みなさんにお手渡し。美酒を片手に語らいながらの集いは、何ヶ月ぶりかの開放感!オープンエアーならではのくつろぎにあふれていました。

 佐藤社長の手ほどきで、加藤さんもちくわ巻きに挑戦!新鮮なすり身の弾力に「練りものは練りものでも、土のようにうまくはいかないなあ」と四苦八苦。佐藤社長との“はじめての共同作業”で、なんとか美味しいちくわに仕上がりました。

 工房併設の厨房では、料理班が大奮闘。旬のきのこたっぷり!<えそ醤油>とだしのきいた熱々おでんや、<ほうろく菜種油>を使った揚げたての<ヤマサころっけ>、豆味噌を練った焼き味噌、ふわふわの<厚焼>やはたはたの干物も炭火焼で。〆はなんと!瀬戸の名物料理「ごも(五目飯)」にちなみ、松茸入りの釜飯が登場!
 「窯場で味わう釜飯」は、参加者の皆さんにも大好評でした。

 この日は、加藤さんのお声がけで、瀬戸で活躍する若手作家さんも参加。前回の碧南でのGEN-B交流会にも参加くださった深田涼さんは、色とりどりの釉薬が鮮やかなプレートや酒器で、彩りを。蛍手という光の透け感が美しい陰影を醸し出す磁器の酒器を持参してくださったのは、樽田裕史さん。それぞれの技法と、器とお酒、料理の楽しみ方などをご紹介いただきました。

 合間には、お正月用に窯元の器ショッピングも。器は手にしてみることで、その風合いや味わいもより深まるもの。土の練りものとすり身の練りものをたっぷりと体感し、尾張と三河の文化の豊かさにも触れていただくことのできた和やかな会となりました。

 約1ヶ月後、加藤さんの窯ではいずれも個性豊かで素敵な器が焼きあがり、無事皆さんのお宅へと届けられました。開けてびっくり!世界でひとつのご自身へのクリスマスプレゼントになったのではないでしょうか。

 「練りものもやきものも、素材を練って炎の力を借りて焼く…その原点をたどって自分で手作りをするのは楽しいものですよね。それが食と繋がるのであればなおさらです。食いしん坊の皆さんが作った器はどれも味わい豊か。食卓で美味しい料理とともに楽しんでいただければ嬉しいです」と加藤さんからもメッセージをいただきました!

 来年こそは、東へ西へとまたさらなるGEN-Bの交流が豊かになることを願って。皆様も、良いお年をお迎えください。


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