和食伝聞帖

第5回 2020.12.23

鍋料理の味の決め手は、「すり身」の旨味。

囲んで和む、
日本の鍋料理は団らんの象徴。

 年の瀬から新年へ。ゆく年くる年がいつも以上に感慨深い年越しとなりました。帰省がままならなかったり、大人数での宴会を避けたりなど、いつもとは少し違って、おうちでのんびり過ごす年末年始となったのではないでしょうか。

 お正月と言えばまず、おせち料理とお雑煮。紅白蒲鉾や伊達巻など、華やかな練りものが重箱を彩ります。歳神様をお迎えし、あらたまの年を祝うハレの日の料理と練りものについては、こちらをご覧ください。

○ 第2回 「ハレ」の練りもの、いまむかし。


 大晦日から元旦とご馳走が続くと、ちょっと一息ついて「おせちもいいけど・・・」となるものですね。 地域により多少異なりますが、関西・東海地方では、すき焼きはじめおでん、鍋料理なども好まれるようです。卓上で湯気の立ち上るお鍋を囲んで、好き好きに食べられるのも、ほっとくつろげて和みます。

ハレ食材の魚を、
大切においしく味わうための一手間。

 今日のように冷蔵・冷凍設備や輸送手段のない時代、沿岸部以外の地域では魚は塩物・干物などにして長持ちさせて運びました。それさえも、ふだんはめったに口にすることのできないご馳走でした。

 古来より新年に歳神様をお迎えするための最高のご馳走として、大晦日に「年取り魚」をお供えするという風習がありました。「めでたい」とくればタイですが、“東日本ではサケ(新巻き鮭)、西日本ではブリ(塩鰤)”が年取り魚の定番とされたそうです。また、海から遠い長野県の山間部にもこの風習があったといい、魚を尊ぶ日本の食文化の奥深さがうかがえます。

 新鮮な魚を塩漬けして保存する。そうした先人の工夫から生まれたのが、魚の「すり身」と、それを使った「練りもの」。四方を海に囲まれた日本には、かつては各地で獲れる魚種によって、郷土色豊かな練りものがありました。
 かまぼこ、ちくわ、つみれなどの練りものは、魚肉をすり潰し、食塩その他副原料を加えて練り、成型して加熱した水産加工品のことです。塩を加減よく用いることで、筋原線維たんぱく質が溶け、複雑に絡み合って魚の水分を安定させるため、独特の食感“アシ”が生まれます。

 魚肉を練った「すり身」を湯に入れて煮る「つみれ」のような練りものは、室町時代から江戸時代にかけてすでにあったと古文書にも記されており、「すり身」を指で摘まんで湯に入れる=摘み入れに由来すると言われています。

本来の練りものは出世魚!?
おでんや鍋物の味を格上げ。

 練りものは、もともと「新鮮な地魚をできるだけおいしく保存したい」という思いから生まれた、魚好き日本人ならではの知恵。デンプンなどのつなぎを極力抑え、新鮮な魚を昔ながらのシンプルな方法で加工した上質の練りものは、板わさなどのように「そのまま食べておいしいもの」が本来の味です。

 そのままでおいしいということは、おでんや鍋物では、すり身や練りものから出る“旨味”が、さらにおだしをおいしくしてくれる“助っ人”にもなるということ。他の具材とは違う食感や風味も、お楽しみのひとつです。

 「鉛は金に変わらない」として、鮮魚から職人が手さばきするヤマサちくわ株式会社では、原料として高級魚とされるエソ、グチ、ハモを主に使用。昔ながらの御影石の石臼と塩加減で練り上げた「すり身」から、ちくわやかまぼこ、おでん種などの練りものをつくっています。

 おでんや鍋物でヤマサちくわの練りものをおいしく味わうコツは、食べる少し前に投入し、「煮すぎないこと」。おだしの旨みをしっかり受け止めつつ、同時にその旨みにコクをプラスする、まさに有能な“逸材”なのです。

 「ヤマサちくわの練りものを、鍋料理としておいしく食べる最高の方法は、“水のみで煮ること”。製造に用いる仕込み水ならより良いです。ほどよい塩味と素材本来の風味、食感が際立つ旨味を実感できるはずです」とは、東京會館『八千代』和食総料理長 鈴木直登氏。「現代の名工」おすすめのシンプルを極めた食べ方です。

○ 旬のひと・もの・こと特集

「第7回 ハレの日本料理」(鈴木直登総料理長インタビュー)

 お正月の食材の残りを使ったり、味噌やカレー、トマト風味などアレンジもいろいろと楽しめるのが鍋料理の魅力。魚、肉、野菜、豆腐類など栄養バランスも優れ、何より体を温めてくれるので、代謝も免疫力もアップ。年末年始の食べ過ぎや胃腸疲れを調整するのにもうってつけです。

 魚を原料としたちくわやつみれ、はんぺんなどの練りものは、たんぱく質が多く脂質は少なめ、種類も豊富。 #stayhome が長引く冬の贈答品としても人気が集まっています。

 ヤマサちくわでは、豊橋や三河など地域の伝統の味を楽しめるおでん商品から、専門店の味を季節ごとの変わりおでんで楽しめる頒布会『でんでんおでんの会』、季節の贈答品をはじめ季節の限定商品などもオンラインショッピングにてご紹介。

 また、GEN-Bおすすめの練りものを使ったレシピ『旬の料理帖』では、「すり身」をテーマにバラエティに富んだ活用法を特集しています。

 お正月休みはのんびり、お手軽鍋で骨休みしてはいかがでしょう。新たな年もおいしくすこやかに、笑顔で過ごせる一年となりますようお祈りしています。

● GEN-B 旬の料理帖


● ヤマサちくわ(お祝い・ギフトなど)



TOP