活動レポート

第10回『豊・食・人 GEN-B』交流会

「~江戸から続く手仕事と魚旬暦を楽しむ~その十」

開催日 2025年11月19日(水)
■ 昼の部 13:00~16:00
■ 夜の部 18:00~20:45
場所 吉祥寺「にほん酒や」
東京都武蔵野市吉祥寺本町2丁目7-13
電話番号:0422-20-1722
http://web-farmer.jp/
https://www.facebook.com/nihonsyuya/
お話 ヤマサちくわ株式会社 七代目 代表取締役 佐藤元英
https://www.yamasachikuwa.com/

若者文化の街・吉祥寺のにぎわいの中、 日本酒と肴が旨いと評判の店で初開催!

 暦の「雨水」を過ぎると、寒波もやわらぎ、新酒も出揃って蔵元では蔵開きが行われる季節の到来です。とはいえまだまだ三寒四温。あったかおでんも人肌の燗酒も恋しく、日本酒好きにはそんな季節のうつろいもまたご馳走です。
 食いしんぼうGEN-Bおでん初めは、初冬に開催された吉祥寺の人気店『にほん酒や』での交流会でした。商店街のにぎわいと飲み屋の灯りが交差する界隈にて、昼の部・夜の部の二部制で開催されました。

 今回のテーマは、創業200年を目前に控える豊橋の老舗『ヤマサちくわ』の練りものと日本酒の“出会い”による新発見。七代目・佐藤元英社長の職人魂と、店主・高谷謙一氏の日本酒の味わいを熟知した独創的な料理が共鳴し、おでん以上に熱々の一日となりました。

 『にほん酒や』は、店主の高谷さんが、日本酒と料理との親和を丁寧に組み立てる店として、日本酒通からお酒の入門者まで、層厚く支持されている一軒です。
 日本酒は、ほかの酒に比べてアミノ酸由来の旨味を持ち、料理と合わせることで味のよさがいっそう引き出されやすい。何より、お米を発酵させてつくる酒だから、発酵食や熟成の旨味ともよく響き合う。その日本酒をよりおいしく楽しんでもらうために、青森・津軽出身の高谷さんは、地元の郷土料理を手がかりにしながら、江戸の料理法や各地の素材も高谷流に取り入れ、酒の肴へと仕立てていきます。

 この店でおすすめする飲み方は、主に「燗酒」。人肌より少し上の温度(40℃前後)にすると、米・麹由来の香りがふわっと立ちのぼり、味わいもやわらかく舌になじみます。だしや発酵の旨味とも合わせやすく、料理の流れの中で無理なく楽しむことができます。
 酒と料理——どちらも郷土や土壌が醸してきた味わいを引き出し、引き立て合うことで、自然に次の一口が進みます。

こだわりの練りものと厳選された美酒、 極上のペアリングで、“おでん初め”。

 会の前半は、七代目・佐藤社長のお話から。毎回皆勤賞の参加者のために頭をひねり、新ネタも仕込みつつの楽しいレクチャーです。

佐藤: ヤマサちくわでは、エソ・グチ(イシモチ)・ハモを核に、産地から運ばれる鮮魚のその日の状態を見ながら6~7種類の魚を合わせ、魚の力を引き出していきます。冷凍スケトウダラなどをカッター機械で混ぜ合わせる「水産ミキシング商品」ではなく、魚の性質を見極め、アシ(テクスチャ)にこだわって石臼を用いて“練り上げた”「水産練り製品」を作っているという自負があります。味や風味の決め手となる三河みりんや塩、砂糖、でんぷんなども、「○○○風」ではなく、少量でも“ほんもの”を使う。もう、香りから色合いから全然違うんです。
まあ、そんなところにとことんこだわって、自ら“手作りセット”を作っています。自分自身が職人でもあるので、「食べたいものを自分でパッと作れる良さ」がありますね(笑)。今日も、お土産として3種お持ちしました。お楽しみに。

 お酒は、高谷さんが「お料理の邪魔をせず、かつ温めてさらに旨い」と太鼓判を押す、山形県「鯉川酒造」の純米酒を中心に、昼・夜で異なる構成で供されました。
 幻の米「亀の尾」発祥の地で醸される、キレのある旨辛口は、練りものの脂を優しく流します。「あたためますよ」は、まさに燗酒向きの純米酒。お待ちかねの乾杯に、皆の笑顔がほころびます。

 高谷さんがこの日のために組み立てた料理は、全皿にヤマサちくわの商品がアレンジされた特別コース。雲丹づくし蒲鉾の白板昆布巻き、勘八・ミント・巻子竹輪の海苔巻きから始まり、ヨーグルトを使った白竹輪と春菊の白酢がけ、津軽の郷土料理「すくめ」を思わせる酢包み、上揚げ半と野菜の「でんぶ」、帆立竹輪の玉子とじ「かやき」といった、巧みにアレンジされた郷土食など、練りものの食感や香りを少しずつ変えながら進みます。

 旬のコノシロ竹輪と胡瓜の春巻きには柑なんば(柚子麹味噌)、糸より鯛のすり身と豆腐の蒸し物には三宝甘長唐辛子など、お酒との味わいを何倍にも膨らませてくれるあしらいは、お見事の一言です。

香ばしさが立ちのぼる炭火のライブ感、 自分で焼く“コノシロちくわ”に感激!

 宴たけなわ、もちろんGEN-B交流会のハイライトは、佐藤社長自らすり身を巻き、参加者一人ひとりが自ら炙る「炭火焼きちくわ体験」です。この日は特別に「コノシロ」のすり身が用意されました。

佐藤: コノシロは、江戸前寿司では「シンコ」として珍重されますが、成長すると骨が多く、市場では捨て値で扱われることも少なくありません。しかし、脂ののったこの時期のコノシロは、練りものの材料として計り知れない可能性を秘めていると思います。今回初めてコノシロをメインに使いました。

 なるほど、炭火で炙ると、これまでのちくわでは経験したことのない、香ばしい焼き魚や干物を彷彿とさせる力強い香りが立ち込めました。皮と身の間の脂が弾ける音、そして濃厚な旨味。佐藤社長もその香りに思わずうっとり。

 高谷さん、スタッフの方も、佐藤社長の指導のもとちくわ巻きにチャレンジしてみるも、「社長はあっという間に巻き上げていくのに、こんなに難しいなんて!」と苦笑い。焼き上げはとってもお上手でした。

 「歯ごたえもごちそう!」「この焼きたての皮の香ばしさが格別」と大好評。皮だけを巻いて商品にした〈巻子竹輪〉を披露すると、驚きと感嘆の声がやみませんでした。

アツアツのおだしが染み込んだ極上の味、 特製おでんで、自慢の練りものを堪能。

 メインは、おでん盛り合わせ。「今回は練りものの持ち味を生かすため、昆布は入れつつ、みりんなどの甘みを控え、ほぼちくわと練りものから出る出汁で仕立てました」と高谷さん。
 雲丹豆、くわい団子、うずら巻、青しそ巻きに加え、玉子、こんにゃく、蛸、白子などなど、全部制覇したい贅沢さ!そのおだしをたっぷりと含んだ大根は、秋田から届いた「沼山大根」。水分が少なく身が締まり、煮含めるほど旨味が濃くなるという伝統野菜です。

 かつて三河湾の塩を信州へと運んだ「塩の道(現在の飯田線沿い)」の歴史を再現した、「塩漬けちくわ」も登場。冷蔵技術のない時代、竹輪を塩に漬け込み、10日以上かけて山奥へと運んだ先人の知恵には驚きです。カチンカチンに締まった塩漬け竹輪を水で戻し、ひと味違ったちくわの食感と、いにしえの味わいを楽しんでいただきました。

 終盤には、おでん出汁を日本酒で割った「出汁割り」も登場。大根や蛸など具材の旨味が溶け込んだ出汁と、滋味深く温かな日本酒の融合に、心も身体も芯から解きほぐされていきました。

 締めは、ヤマサちくわ×GEN-Bが奥三河の棚田・四谷千枚田(愛知県新城市)で田植え・収穫した、炊きたての新米ミネアサヒ。粒がしっかりして噛むほどに甘味を感じる“銀シャリ”に、「美味しいごはんはお酒のつまみになる!」と、さすがの呑兵衛コメントも飛び出して大いに盛り上がりました。

 高谷さんがまかないで握ってくださった塩むすびも、ふっくらおいしーい!自分たちで田植え・稲刈りをして収穫できたお米の味は格別でした。

かけがえのない資源を次代へつなぐために、 語り合い、育みたい、“食いしんぼう”の輪。

 「温暖化の影響や海の汚染等、漁獲とともに日本の練り製品文化は今、存亡の危機にあります。でも、こうして理解してくれる“食いしん坊”の仲間を少しずつ増やしていくことが、伝統を守る一歩になると思って、楽しく続けています」と佐藤社長。

 今回の交流会をご縁に、2026年2月26日(木)〜3月4日(水)『にほん酒や』&東急百貨店吉祥寺店での連携企画・催事にも繋がりました。吉祥寺の皆さま、今後ともどうぞよろしくお願いします!

 伝統を継承しつつも新たなチャレンジと遊び心を忘れないヤマサちくわの姿勢と、郷土の味を現代の感性で創作し、和みの場を育む「にほん酒や」さんのおもてなしと。湯気とともにあたたかな時間に包まれた一日となりました。
 つくり手と料理人、そしてそれを愛でる食べ手が一体となって楽しめる交流会を、2026年も活発に展開していきます。



● ヤマサちくわ オンラインショッピング


● 美酒蔵 はなたれ屋


● 豊・食・人 GEN-B facebookページ


TOP