ソースは素材を活かすための「脇役」、
そこには数多のチャレンジが息づく。
2025年9月、GEN-B稲刈りツアーの初日。1924年(大正13年)の創業以来、浜松でソース造りに邁進してきた『トリイソース(鳥居食品株式会社)』を訪れました。四代目 鳥居大資社長によるトリイソースについてのレクチャーと、工場・直売所を見学。原料、製法へのこだわり、ソースのオリジナリティとバラエティ、その美味しさに参加者全員「ナットク!」の太鼓判でした。
● 四谷の千枚田(愛知県新城市)「豊・食・人 GEN-B 稲刈りツアー2025」
その後、2025年11月本社に近接して『トリイ食堂』も新規オープン。ソースを主役にした「家庭料理」と伺い、ヤマサちくわ株式会社七代目 佐藤元英社長が、2026年1月に再訪しました。
豊橋—浜松という近距離の交流はもちろんのこと、何より厳選された素材の活かし方、独自のソースづくりの工夫など、「職人による手づくりソース」を守り続けながら進化し続けるものづくりに共鳴。練りものとトリイソースとの新たな出会いを探るという目的もありました。
鳥居食品では、「調味料は主役(素材)の良さを引き立てるあくまでも脇役」という信念に基づき、無添加・無着色・無香料のソースを造り続けています。
四代目 鳥居大資社長は語ります。
「食材そのものが美味しくなった現代において、ソースの役割は変わりました。かつては肉の臭み・えぐみを消すためのマスキングが主目的でしたが、今は素材の良さをいかに引き立てるか。目立たないけれど、そこはかとなく個性や香味が存在する。それが私たちの理想です」。
100年続く家業を背負いながら、鳥居社長はそれを決して“型を守るだけの伝統”とは捉えていません。
「失敗も数知れずあります。酢の造りを抜本的に変えたり、日々トライ&エラー、チャレンジの連続です。僕がどんどん新しいことを言い出すので、社員には申し訳ないくらい」と苦笑い。
「ゆっくり」と「まるごと」が醸成する、
職人仕込みの唯一無二たる野菜の旨味。
写真提供:鳥居食品株式会社
製造工程にも、「ここまで!?」と驚くほどの手間がかけられていました。まず印象的だったのは、原料にペーストやパウダーを使わず、生の野菜をまるごと用いていること。効率だけでは測れない、素材への向き合い方と味づくりへの姿勢がそこに表れていました。
野菜は生もののため、5〜7月は地元産、秋以降は北海道から佐賀へと産地をつなぎ、鮮度の高い玉ねぎなどを確保。さらに調理法も独特で、野菜は常温から加熱し、60℃に達するまでをできるだけゆっくり進めます。60℃を超えると酵素が失活するため、その手前まで時間をかけることで、野菜本来の旨味を引き出しているそうです。
さらに、煮込んだ野菜はあえて裏ごしをしません。ここで活躍するのが「石臼(いしうす)」です。濡れた状態のまま石で擦り潰す「湿式」の手法で、トマトなら皮も種もまるごと擦り潰します。皮の近くにある濃いうまみまで余さず取り込みながら、雑味は出さない。ソースの味の要となるのが、この石臼です。
ヤマサちくわでも、すり身の味や食感を左右するのはやはり100年選手の石臼。均一でない凸凹が旨味のテクスチャを生み出します。目的や用途は違っても、ものづくりのこだわりに通じるものがありました。
ヤマサちくわ株式会社工場
ソースの味を支えるうえで欠かせないのが「酸味」です。多くのメーカーが仕入れたお酢を使うなか、トリイソースは創業以来、お酢の自社醸造を続けています。ここでも貫いているのは、効率優先ではなく、菌の働きを見守りながらじっくり発酵させる「静置発酵法」です。
「速醸法なら1時間ほどで進む工程ですが、うちでは発酵に約1カ月、さらに熟成に約1カ月をかけます。酢酸菌が表面に白い膜を張って酸素を取り込み、発酵が終わると、その膜がすっと底に落ちる。それが“発酵終了”の合図です。時間はかかりますが、その分ツンとこない、まろやかで深みのある酸味が生まれます」(鳥居社長)
さらに近年は、使われなくなった酒粕に砂糖を加えて酵母を再活性化させ、アルコールを経てお酢へと育てる「粕酢」の手法も取り入れているとか。地域の寿司店や餃子店にも親しまれるこのお酢が、ソースにほかにはない奥行きをもたらしています。
ホールスパイスを絶妙配合で贅沢に使用。
木桶仕込みならではの、「桶底の恵み」。
写真提供:鳥居食品株式会社
香辛料の扱いもまた贅沢です。粉末ではなく原形のスパイスを、お茶を淹れるように濾し袋に入れ、ソースの中にじっくりと漬け込みます。苦味や薬っぽさを出さず、香りだけを贅沢に抽出。その後は、工場の奥にある木桶で熟成させます。そう、ステンレス製ではなく、「木桶」なのです。
醤油や味噌の世界でも、近年稀少な「木桶仕込み」を復活させる動きが活発ですが、ソースで木桶を維持し続けている蔵は、全国でも指で数えるほど。それでもこだわる理由があります。
写真提供:鳥居食品株式会社
「木桶の表面にはミクロの凹凸があり、それが接触面積を広げて熟成を助けます。また、木そのものがソースを吸い込み、成分を記憶する。木桶には、“これまでのソース造りの記憶”が刻まれているんです」と鳥居社長は熱く語ります。
木桶の中で、ソースは重力に従って分かれます。上から4分の3は、さらっとしたキレのある〈ウスターソース(赤ラベル)〉。そして底に沈殿した、野菜やスパイスの旨味の結晶である濃厚な「オリ」の部分──これが〈桶底ソース(青ラベル)〉となるのです。
ソースの新たな役割を探り、食卓へ。
「家庭料理の実験場」トリイ食堂。
「ソースと一緒になった料理の味が美味しい!」と言われるソースづくり。こうした伝統的な手仕事の価値を、現代の食卓にどう繋げるか。そのひとつの答えが、2025年11月21日にオープンした『トリイ食堂』です。
ソースでお魚を煮るとどうなるか、ソースでマリネをしたら…など、誰もが真似できる“家庭料理”を通して、ソースの新たな可能性を知っていただきたい。そのため、従来の概念を覆す新しい提案を、工場の社員自らが工夫し、運営しています。
「トリイソース料理」とも呼ぶべき人気の日替わり定食は、メインから小鉢までトリイソースやオリジナルの調味料が生かされています。ソース屋がつくる食堂ならではのお楽しみ、8種類のソース+自家醸造のお酢の試食やかけ比べも!ソース好きにはまさに至福のランチスポットです。
写真提供:鳥居食品株式会社
● トリイ食堂(予約制)
静岡県浜松市中央区相生町19-14
[対談]ヤマサちくわ meets トリイソース
新たなコラボに向けた試食会&対談。
あらためてトリイソースの真髄に触れ、家庭料理の新境地を味わった後は、本題の試食です。ヤマサちくわ人気のラインナップ〈特製ちくわ〉〈厚焼〉〈上揚半〉〈野菜ソフト〉と、トリイソース の〈中濃〉〈ウスター〉〈桶底〉などを様々な掛け合わせで食べ比べ。味わいの発見や組み合わせの妙など、感想や意見も含め、おふたりにお話を伺いました。
枠にとらわれない新テイスト提案で、
三河の味噌と浜松のソース文化が越境!
写真提供:鳥居食品株式会社
写真提供:鳥居食品株式会社
伝統を守りながら、既成概念の枠にとらわれず新たな挑戦を止めないふたりの経営者。職人としての誇りを原動力に、両社が描く次なる一手に期待が高まります。皆さんもぜひ新たな味の出会いにトライしてみてください。
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