旬のひと・もの・こと特集

第3回 施設園芸農業
イノチオファーム豊橋(愛知豊橋次世代施設園芸推進コンソーシアム)(2019.10.18)
【イノチオみらい株式会社】
本社 愛知県豊橋市向草間町字北新切95番地

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【イノチオファーム豊橋】
愛知県豊橋市新西浜町1番地

次世代の「スマート農業」を実践する、
日本最大規模のミニトマトハウス。

渥美湾(愛知県豊橋市)に面した広大な敷地に、
最先端設備を網羅した循環型ハウスが誕生。

 豊かな水、温暖な気候と流通環境に恵まれた愛知県豊橋市は、野菜、果樹、畜産など全国トップクラスの産出額を誇る農業の一大産地。また、1910年(明治43年)のメロン栽培に始まる「農業用ガラス温室発祥の地」として、最先端の高度な施設園芸に取り組む企業が集まっていることでも有名です。
 そうした施設園芸に最適な設備や資材、生産システムなど、農業を総合的にサポートするトータルアグリカンパニー「イノチオグループ」もそのひとつ。専門性の高い8つの事業領域が連携を持ちつつ、農業を全方向からそれぞれに高いレベルで支援、リードしていく設備・体制を整えています。

写真提供:イノチオみらい株式会社

 「施設園芸農業」とは、農地をより高度に効率的に活用するため、ガラス室・ビニールハウス・トンネル・温室・マルチ・暖房・冷房・灌水・換気・空調などの施設で行う園芸農業のこと。野菜や果樹、花きなどの園芸作物は、日本の農業産出額の約40%を占める主軸を担っており、年間を通して安定供給する上で、施設園芸の果たす役割はたいへん重要とされています。

 しかし、冬場の暖房コストや化石燃料の使用による環境負荷の問題、天候の変動や天災被害などの影響をはじめ、栽培ノウハウの継承など、さまざまな課題も…。
 そこで、それらの課題解決に向け、農林水産省は「次世代施設園芸の導入支援」を推進。愛知県でもイノチオグループを含む産学官でコンソーシアムを構成して取り組むことになり、2016年、豊橋市新西浜町に38,700m2もの大規模な園芸施設『イノチオファーム豊橋』が誕生しました。

写真提供:イノチオみらい株式会社
2018.5.「第1回GEN-Bの旅」より

グループ施設の処理機能に着目し、システムを開発。
循環型施設園芸農業で、環境負荷と経費軽減を実現。

 同施設を運営するのは、「イノチオみらい株式会社」。事業の第1弾は、約3.6haの大規模な高軒高多連棟ハウスを整備し、ミニトマトを温室栽培。空調や複合環境制御技術により21t/10aの高収量をめざした結果、たちまち目標を超える50tを達成し、国内最大級の収量を誇るまでに至りました。

 この施設の最大の特色は、経営コストと環境負荷を減らすため、温室暖房に隣接する豊川浄化センターから出る19~20度の温水(放流水)を活用している点。
 「放流水は微生物処理の際に発生する熱で温かく、年間を通して19℃に維持されます。この熱を施設内に効率よく取り込むシステムを自社開発したことで、重油使用料を1~2割削減することに成功しました」そう語るのは、イノチオみらい株式会社代表取締役 大門弘明さん。

 地域エネルギーを活用し、化石燃料使用量30%削減するという農水省の補助金事業を農業王国・愛知で実践することで、将来的にもさらに農業に強い地域としての盤石を築きたい。そんな地域農業の未来を見据えた熱い思いが、小さな赤いトマトたちには込められています。

 そのほか、養液栽培で排出される排液処理についても、同センターで処理するシステムを設け、従来の 50%のリサイクル率から100%を達成を目指しています。さらに農地再生を視野に入れた工夫や配慮など、従来の農園のあり方を一新する発想としくみづくりに取り組み、「安心・安全・安定」を実践する栽培技術確立をめざして研究、実証を重ねています。

軒高が高く、採光性に優れた広大なハウス内。
トマト本来の生命力を引き出すオランダ式を採用。

 最先端設備が網羅された循環型ハウス農園に一歩を踏み入れ、まず驚かされるのが、広大なスケールと四方八方から自然の光が注ぎ込む明るさ。その高い天井から整然と吊り下げられているのが、鈴なりのミニトマトです。

 上方に茎を伸ばしながら下に順番に果実をつけていくトマトの特性を生かし、高所にワイヤーをかけて蔓を吊るし、収穫する度に次の収穫作業がしやすいよう茎を引き下ろして苗床に巻きつけていくという「ハイワイヤー式栽培法」。
 上に伸ばすことで光が満遍なく当たるため、光合成を促し、トマトが健全に育つ環境が整えられるという。

 「糖度についても、水を与えないことで糖度を高める方法ではなく、トマトが本来持っている力を引き出すことで、健全に育て、自然に収量を上げていく。ここでは、世界最高レベルの生産性を誇るオランダのトマト栽培の考え方を採用しています」。
 試食で出された粒ぞろいのつややかなミニトマトを頬張ると、フルーツのような甘さとみすみずしさにあふれ、皮も柔らかく口に残らない。「トマト嫌いな人が美味しいと感じるトマト」そんなテーマそのもののおいしさでした。

農業とは生命<いのち>を育む仕事、
生物多様性といかに向き合っていくかが今後の課題。

 日本の農業は近年、生産者の高齢化と担い手不足、異常天候や自然災害の多発、輸入農産物の流通などを背景に、生産量の減少と収益性の低下などの課題に直面しています。そこで、イノチオグループでは、将来に持続可能な農業とそれに関わるすべての人々が幸せに暮らせる社会づくりの貢献を目めざし、国連が採択した持続可能な開発目標「SDGs」 に賛同。さらに、「安心・安全」な農作物を提供するため、2006年7月にJGAP、2018年5月には食品安全、労働環境、環境保全に配慮した持続的な生産活動を実践する優良企業に与えられる国際基準「GLOBAL G.A.P.認証」を取得し、海外へ向けてもより安心・安全な高品質生産を広く提供できる体制も整えています。

 革新的な取り組みは、生産のみならず、人材育成にも多々活かされています。たとえば、栽培経験のない作業スタッフでも、安定して高い品質のトマトが作れるようマニュアルも整備し、働き方改革や農家の高齢化・後継者対策などにも積極的に対応しています。

 「新たな技術に挑戦し、先進のテクノロジーを生かした農業を推し進める一方で、微生物を多様化させ、化学合成農薬を使わない農場の運営にも力を注いでいます。そうした両極端な農業に挑戦することは、生活の多様化への取り組みでもある。健康な土から生まれる健康な農産物により、畜産も人間も健やかに成長していく。その本来の命の循環を大切に、安定した品質と環境負荷のない生産を維持していくことで、災害にも負けない農業を日本に根付かせたいと願っています」とイノチオホールディングス株式会社 代表取締役社長 石黒功さん。


写真提供:イノチオみらい株式会社

 こうした革新的なコンソーシアム事業を通じて、「次世代の農業」を具体的な事例と検証ともに発信する使命も担っているイノチオファーム豊橋。日本農業の発展を目的に、企業や学生への施設見学や講習会も積極的に実施、設備データの公開など新規農業者への情報も広く開かれています。ぜひ、施設園芸の最先端をその目で確かめ、感じてみてください。


写真提供:イノチオみらい株式会社

● 次世代施設園芸愛知県拠点「イノチオファーム豊橋」 見学・視察


● 「第1回 三河GEN-Bの旅〜後編」活動レポート


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