和食伝聞帖

第3回 2019.10.25

練りものをだしごと味わう「おでん」の文化。

「でんがく」が西へ東へと旅をして、
「おでん」に。

 昭和の時代は駅前の屋台でちょいと一杯、平成になるとコンビニでテイクアウト、さてさて令和は…?近年では、中国や台湾などアジア各地のコンビニエンスストアや専門店で販売され、手軽でヘルシーなファストフードとして認知されつつある、日本の「おでん」。
 黄金色のアツアツおだしをたっぷりとふくんだ多彩な具材=おでんだねを、好き好きに選んで食べる楽しさ、おいしさは、おひとりさまでも大勢で囲んでも、ほっこりうれしい「あったか料理」の代表格です。

 おでんのルーツは、室町期に豆腐に串を刺して焼き、味噌をつけて食べた「田楽(でんがく)」と言われ、江戸期に発刊された豆腐に関する料理本『豆腐百珍』(1782)では、さまざまな田楽が紹介されています。
 豊橋名産ヤマサちくわのCMでもおなじみ、弥次喜多(やじきた)コンビが江戸から西へと旅をする江戸後期の滑稽本『東海道中膝栗毛』(1802〜1804)では、「田がくで飯にしよう。酒も少し」「菜飯お田あがらんかいな」など茶屋での会話にも出てきます。

 「菜めし田楽」は、かつての東海道吉田宿だった豊橋の伝統料理。文政年間(1818~30)に創業した『きく宗』といった老舗も健在で、焼いた豆腐に甘めの八丁味噌だれ、さっぱりとした菜めしとの取り合わせは、三河人のふるさとの味として親しまれています。

 お江戸から東海道を通って、京へ、大坂(現在の大阪)へ。江戸後期には豆腐以外に魚や野菜の田楽も登場し、とりわけこんにゃく田楽が人気だったとか。串に刺して湯で温め、甘味噌をつけて供する方法は、焼く手間も要らず、たちまち人気に。
 時を同じくして、江戸では近郊の銚子や野田で醤油の醸造が盛んになったことから、醤油味の料理が増え始め、こんにゃくも醤油で煮込むようになっていきました。やがて里芋や大根なども入り、それを燗酒と売る店が「上燗おでん」と看板を掲げたことから、おでんは煮込み式となったという説があります。

 明治以降、おでんが再び関西に伝わった時、関東の煮込みとして「関東煮(かんとうだき)」と呼ばれるようになったとか。そして、その東西の交流地であった愛知では、関東煮以外にも豆腐田楽と同じ八丁味噌で煮込んだ濃厚な「味噌おでん」が生まれました。最近では、静岡の名産・黒はんぺんを入れた「黒おでん」も注目を集めています。

 こうして田楽から始まった食文化は、東海道を東へ西へと行ったり来たりしながら、「おでん」の名で各地へと広まり、日本人のソウルフードとして家庭にも浸透していきました。

おでんの旨みを格上げする、
練りものの底力。

 おでんに欠かせない種ものはいろいろあれど、「おだし」がそれぞれの味わいを引き出したりさらに豊かにしたり、変化を楽しむ上でも大切な役目を果たしています。

 大根などの野菜や卵、こんにゃく・豆腐類は、おだしの旨みをしっかり受け止め、対してすじなどの肉類や魚介類は、関東煮のベースとなる昆布や鰹、醤油の旨みにコクをプラス。そしてその両方の役目を果たすのが、なんと「練りもの」の存在なのです。
 魚を原料としたちくわやつみれ、はんぺんなどの練りものは、たんぱく質が多く脂質は少なめ、ヘルシーで食べ応えも十分。特に新鮮な魚を昔ながらのシンプルな方法で加工した上質の練りものからは、旨みのあるだしも出て、他の種とは違う食感も楽しめるというバイプレイヤーなのです。

 練り製品の味を決める上で重要なのは、原料である「魚」。ヤマサちくわでは練りものの原料としては高級魚とされるエソ、グチ、ハモを主に使用しています。鮮魚を職人が自社工場でさばき、練り具合、塩加減、焼き加減まですべての工程に手間をおしまずつくられる練り製品のほとんどは、おでん種としても多彩にお楽しみいただけます。

 すべてそのまま食べられる商品なので、おでんに入れれば、おだしにその旨みが溶け込み、格別の味わいに。おいしく召し上がっていただくコツは、最初からお鍋に入れてグツグツと煮込みすぎないこと。仕上げにさっと投入し、ふっくらとおだしをふくんだところでいただくのが、GEN-Bおすすめの食べ方です。

● ヤマサちくわ 商品のご紹介


さまざまなシーンで、
日本の食文化をより多彩に。

 食べる時間や集うシチュエーションも多種多様な現代のくらし。個食・中食・外食と、さまざまなシーンで好き好きなスタイルで楽しめることも魅力のひとつです。

 ヤマサちくわでは、熱々のおでんをおいしく召し上がっていただくため、『広小路でんでん(豊橋市)』『ねりや花でん(豊橋市)』など直営の飲食店 も運営。日高昆布・カビ付節・宗田鰹・ウルメ等を贅沢に使った熱々のおだしで仕込んだ特撰おでんを季節のお料理や地酒とともに楽しめるとあって、地元はもちろん県外からのお客様も多く訪れます。

 お店で味わうのがいちばんですが、専門店ならではのこだわりのおでんをご家庭で味わっていただけるよう、ヤマサちくわでは『でんでんおでんの会』 というおでんの頒布会も展開中。『広小路でんでん』から、毎月こだわりの旬のおでんが届きます。これからの時期は、全国各地の地酒とのセットもお楽しみ。団欒のひと時がほっこり和みそうです。

 家庭でこだわりのおでんを手軽に楽しみたい!という方には、ヤマサちくわ各直営店 はもとより、オンラインショッピング による通販も充実。オリジナルのおでんつゆや三河らしい赤味噌の練りものとつゆの素などがセットになった「豊橋おでん」の詰合せなど、これからの季節ご贈答にもおすすめのラインナップが揃っています。

 おでんセットの「おでんつゆ」は、厳選された原料を使用し、しっかりとしたヤマサちくわの種を活かすための工夫を重ね、何百というつゆの中から吟味した絶妙の味わい。ヤマサちくわオリジナルの絶品だしです。

 ヤマサちくわ選りすぐりの練りものをさらに多彩に、華やかに、さまざまなアレンジでお楽しみいただけるよう、季節ごとのレシピもGEN-Bサイト限定で発信しています。素材の旨みを引き立てる〈えそ醤油〉を隠し味に使ったスペシャルおでんを、ぜひお試しください。

● GEN-B 旬の料理帖


 深まりゆく秋から冬へ、令和初の年越しに向けて。日本の食文化を代表する「おでん」の魅力をさらに深く知り、多彩に味わい、あたたかな鍋を囲む幸せを分かちあうのもいいものです。



関連リンク

● ヤマサちくわ(おせち・お祝い・ギフトなど)


● おでん頒布会


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