活動レポート

千余年東三河に継承される天下の奇祭

国重要無形文化財『豊橋鬼祭』(前編)

開催日 2019年2月10日(日)・11日(祝)
場所 安久美神戸神明社(あくみかんべしんめいしゃ)
豊橋市八町通3丁目17
TEL:0532-52-5257
https://onimatsuri.jimdo.com

赤鬼、天狗、青鬼、黒鬼、小鬼が来たりて、
東三河に春の訪れを告げる厄除け神事。

 日本の歴史公園100選にも名を連ねる、愛知県豊橋市のシンボル的存在 豊橋公園。その真向かいに千年以上の歴史を持つ「安久美神戸神明社」が鎮座します。
 社伝によれば、天慶3(940)年、平将門の乱が平定された時、朱雀天皇により東三河の飽海(あくみ=安久美)の郷が神領として寄進され、この地の繁栄と豊作を祈願したのが始まりとされています。

 毎年節分、立春を迎えてまもなくの2月10・11日。両日にわたり、厳粛かつ盛大に行われる『豊橋鬼祭が有名で、約1000年前から継承されてきた尊い神事。毎年氏子14町会によって、神楽・田楽・歩射(ぶしゃ)・卜占(ぼくせん)・御神幸など古式ゆかしい様々な行事が執り行われます。

 中でも本祭のハイライト は、「赤鬼と天狗のからかい」と呼ばれる神事。荒ぶる神の赤鬼を武神である天狗が懲らしめようと、互いに秘術を尽くして戦うそのやりとりが、なんともおおらかでユーモラス。最後には天狗に敗れた赤鬼が、償いにタンキリ飴と白い粉(小麦粉)を撒きながら境外へ飛び出していくのですが、この粉を浴び、飴を食べると厄除となるとして、老若男女が全身真っ白になって争奪し、おおいに盛り上がるのです。

 もともとは、高天原でいたずらをする鬼を武神・天狗が懲らしめ、非を認めた鬼が白粉餅で穢(けが)れを祓い、村人たちに償いをしたという古来の神話を田楽に取り入れたもの。平安時代から今日まで古式を崩さず連綿と伝承されてきたことから、国の重要無形民俗文化財に指定されています。

 祭礼で用いる赤鬼と天狗の面は、昭和15年(1940年)に神社創建一千年と皇紀2600年を祝って作られたもので、それまでの面はかつて三河国吉田を治めていた今川義元が寄進したもの と伝えられています。また。徳川家康公は、吉田城内に在した竹千代君の頃、正月にご社前の松の木の下に腰掛けて鬼祭を楽しんだという逸話も残されています。

■2月10日 「宵祭」主な行事
  • 青鬼出動・岩戸舞【青鬼厄除飴まき行事】
  • 開運厄除特別祈祷【開運飴まき行事】
  • 五十鈴神楽
  • 奉幣祭
  • 奉賛会【厄除飴まき】
  • 岩戸舞と青鬼【青鬼厄除飴まき行事】・門寄り
  • 宮司談合宮へ参向
  • 夜宮祭(浦安の舞)

■2月11日 「本祭」主な行事
  • 御日の出神楽
  • 例祭(献幣使参向、浦安の舞)
  • 奉賛会【厄除飴まき行事】
  • 子鬼社参【子鬼厄除飴まき行事】・門寄り
  • 小鬼門寄り(かどより)田楽ならし(潔斎殿前)
  • ソ(浦安の舞)
  • 五十鈴神楽
  • 奉賛会【厄除飴まき行事】
  • 御的の神事
  • 赤鬼と天狗のからかい
  • 司天師田楽、諸神楽、御玉引の年占
  • 談合宮へ御神幸
  • 神前奉納太鼓

 1日目の「宵祭」では、社前に組まれた八角台で、お囃子に合わせて古代服に身を包んだ三神が「イヤサカホイホイ」と舞い、青鬼とともに厄除けの タンキリ飴 を境内に撒きます。
 「アーオー」の掛け声とともに、青鬼は町内へ。氏子達を引き連れ1軒ずつに飴を配って町中を巡回(門寄り行事)魚町のヤマサちくわ本店 へも、青鬼がお出ましになり、佐藤元英社長はじめスタッフ皆さんの頭を撫で、厄除けのタンキリ飴がふるまわれました。

 2日目の「本祭」は、朝から御日の出神楽、その年の五穀豊穣と国の繁栄を祈願する重要なお祭りとして、神社庁より献幣使が参向。市長はじめ地域の名士や鬼祭奉賛会員、宮司、神職者ら一同が参列し、厳粛に例祭が執り行われました。ヤマサちくわ株式会社佐藤社長は特別名誉会員として、揃いの赤い裃姿で参列。

 ご祈祷を終えると本殿正面の八角台に勢ぞろいし、「厄除飴まき行事」が行われました。

 豊橋鬼祭の名物「タンキリ飴」は、境内や社務所でも販売。厄除けの縁起物として、1年間(12ヶ月)健康でいられるよう一袋12個入り。抽選券付きの飴もあり、こちらは祭の後の後日のお楽しみ。

 朝からすでに多くの人で賑わう境内に、ヤマサちくわ《ちくわ煎餅》の露店販売を発見!佐藤社長、赤鬼、天狗と豊橋ならではのスリーショットもキマってますね!

 午後からの神事に向け、若者たちのお囃子に導かれるように赤鬼、黒鬼、天狗の修拔の支度行列。札木町の氏子が扮する小鬼は、厄除飴まき行事の後、袴姿の若者たちを引き連れ、門寄りへと繰り出していきます。

 今年から、鬼たちや天狗がいま街のどこを練り歩いているかをスマートフォンで確認できる「おにどこ」アプリの試用がスタート!地図上で赤鬼や天狗が通る道や神社、祭りの見どころスポット、交通情報などもチェックできます。IT技術を用いて豊橋や豊橋鬼祭の活性化をめざす取り組みとして、豊橋技術科学大学の研究室と企業とがソフトウェアを共同開発。国内のみならず世界へも発信できる技術のプラットフォーム化をめざしているそうです。

豊橋グルメの元祖といえば、「菜めし田楽」。
江戸時代からの三河の味をシンプルに味わう。

 終日続く神事をしばしお暇して、昼食は豊橋の伝統料理「菜めし田楽」を味わいに『菊宗』 へ。創業文政年間、江戸時代より約200年以上に渡り、ここ吉田宿(現 愛知県豊橋市)にて豆腐田楽と菜めし一筋という、豊橋を代表する老舗です。

 こちらでは、熱々を供するため、注文を受けてから豆腐を焼き始めます。国産大豆使用の自家製豆腐をこんがり炙り、甘めの味噌だれに、好みでからしを添えて。細かくきざんだ大根の葉を混ぜ合わせた"菜めし”に乗せていただくと、香り芳しくさっぱりとした後味で箸がすすむこと。豊橋を訪れるベジタリアンの方にもぜひおすすめしたい、ヘルシーな日本の伝統食といえましょう。

 午後はふたたび安久美神戸神明社に戻り、「赤鬼と天狗のからかい」など、豊橋鬼祭本祭のクライマックスを体験!
《後編》のレポートもぜひご覧ください。


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