活動レポート

千余年東三河に継承される天下の奇祭

国重要無形文化財『豊橋鬼祭』(後編)

開催日 2019年2月10日(日)・11日(祝)
場所 安久美神戸神明社(あくみかんべしんめいしゃ)
豊橋市八町通3丁目17
TEL:0532-52-5257
https://onimatsuri.jimdo.com

「アーカーイー」の掛け声とともに、
白粉舞い上がり、タンキリ飴で厄除け祈願。

 『豊橋鬼祭』本祭。午後からはふたたび神安久美神戸神明社に戻り、本殿前に組まれた八角台にて、2名の射手・1名の矢取による「御的の神事」を見物。12本の矢を12ヶ月に見立て、一年の平穏無事を願います。神事が終わると、魔除け・厄除けのご利益があると言われる御的を若い衆が競って奪い合います。

 この祭りで目を引くのが、子供から若い衆、年寄りまで、町ごと、役目ごとに身につける裃や装束の多彩さ。鬼や天狗役、それぞれの付け人が身につける裃に施された鬼の紋。

 神楽楽人や5-6歳の笹良児(ささらご)の装束、各町氏子や警固隊の法被に至っては、意匠も多彩に染め抜き、刺し子など、個性的で鯔背なグットデザインばかり!聞けば豊橋は柔道着の名産地でもあり、その織りの技術を活かしたバッグなども人気だそうです。「衣装カタログがほしい!」と思わず口にしてしまうほど、何れも個性的で目を楽しませてくれます。

 鬼社の前にかまえるのは、黒鬼。頭を撫でてもらうと無病息災・厄除けになるとして、子供から大人まで、家族全員で並ぶ人も。

 午後2時からは、いよいよ祭りのメインイベント「赤鬼と天狗のからかい」が始まります。境内の人出も最高潮に。

 大勢の見物客が取り囲む境内の参道。虎の皮の褌、太い白の紐を全身にかがった赤鬼が、「だんだら」巻きの撞木(しゅもく)を持ち、多数の警固隊を従えて現れると、一斉にカメラが向けられます。それを追うようにして、具足に身を固めた鼻を突き出した天狗が、司天師と笹良児(ささらご)らと鳥居のあたりに陣取ります。

 赤鬼は実際にはたいへんな重量の装束をまとっているため、両脇から警固の若者に抱き支えられ、ひらひらと招く日の丸扇を頼りに歩を進めていきます。天狗に向かって手を上げて差し招く様子が、なんとも愛嬌たっぷりで、子供達も大喜び。一方天狗は、長い薙刀を振り回し、高く足を上げて大地を猛々しく踏みしめ、飛び上がっては赤鬼を威嚇しつつ、じりじりと迫っていきます。

 そのやりとりが再三続き、やがて追い詰められた赤鬼は挑戦叶わずと諦め、警固の若者に取り囲まれながら退散。償いのためタンキリ飴を供物として社務所に寄進し、「アーカーイー」と口々に叫んで白い粉とともにタンキリ飴を撒きながら一同境内へと走り出していきます。

 この時、白粉が境内を霧のように舞い、その中を見物客たちは逃げるどころか、競って飴を拾います。頭から全身真っ白になって、子供達も大はしゃぎ。皆楽しげに記念撮影をしたり、おおいに盛り上がりました。

 赤鬼退散後は平穏を祝って、八角台にて各町の子供達によるお囃子とともに5、6歳の愛らしい笹良児を引き連れての「天狗の切祓」、「ポン、テン、ザラ」、「司天師田楽」、「天狗神楽」と続き、最後の行事として、農作物の豊凶を占う「御玉引の年占」が行われます。

 こうした神社での行事と並行して、神社を出た赤鬼と小鬼の門寄りは、日が暮れるまで続きます。前日の青鬼に続き、魚町のヤマサちくわ本店にかわいい子鬼が到着すると、お客様も一緒にお迎えして頭を撫でてもらい、飴をいただいて一年の厄除けと無病息災を祈念しました。

 ヤマサちくわ本店では、この鬼祭にちなんだ「鬼のはんぺん」を限定販売。青海苔やカレー味など、赤鬼青鬼、金棒や虎の皮パンツをかたどった練りものは、おみやげに大好評でした。

 2日間にわたり盛大に執り行われた神事は、後世に伝え継ぎたい「ほの国」三河の伝統文化。子供の頃から参加することで地元の祭としてしっかりと定着しつつ、そのバラエティ豊かな内容と魅力で、豊橋市の観光の目玉ともなっています。来年も楽しみに、ぜひお出かけください。


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