活動レポート

第1回 三河GEN-Bの旅

「昔も今も変わらぬ旨さ」 その神髄に触れる(前編)

開催日 2018年5月11日(金)・12日(土)1泊2日
場所 愛知県豊橋市内各所
(ヤマサちくわ本社工場見学含む)
ご案内 ヤマサちくわ株式会社
七代目 代表取締役 佐藤元英
https://yamasa.chikuwa.co.jp/

 豊かに食べ、愛で味わう人々の交流会『豊・食・人 GEN-B』。三河弁げんび〜=食いしんぼうと称するからには、まずは三河の食文化を知ってもらいたい!楽しんでもらいたい!と、《「昔も今も変わらぬ旨さ」その神髄に触れる〜三河GEN-Bの旅》を企画しました。

    5月11日(1日目)
  • 豊橋駅新幹線改札前
  • (路面電車)
  • 豊橋公園 (吉田城址)
  • 豊橋東海道・吉田宿の街を散策
  • 御菓子所『絹与』
  • 老舗うなぎ店『のぼりや』(ご昼食)
  • ヤマサちくわ魚町本店
  • 河合果樹園
  • 二川本陣資料館・本陣
  • 福井酒造
  • ヤマサちくわ直営「広小路でんでん」(ご夕食)

ヤマサちくわの地元・豊橋市内へ 東海道・吉田宿の街、
老舗の味を満喫。

 この2日間のツアーでは、三河地方の玄関口・豊橋市の“おいしいところ”を目で見て、歩き、味わってもらおうと、佐藤社長自らが企画・案内役に。JR豊橋駅を出発し、懐かしい路面電車に乗って市内観光へ。

 電車も、途中すれ違う市バスの車両も、一見ヤマサちくわの全面広告…と思いきや、おなじみキャラ「弥次さん喜多さん」が、豊橋筆や手筒花火など豊橋名物を「ええじゃないか」とPR!そんな共生共栄の心意気に、「ほの国」の豊かさを感じます。

● 豊橋公園(吉田城址)・豊橋市役所

 三河吉田藩—豊橋藩の藩庁が置かれた市民のシンボル的公園。市役所庁舎13階展望ロビーからは、吉田城跡からこの地を豊かに育んできた豊川の流れ、弓張山系の山並み、三河湾や知多半島などを一望。東西を結ぶ東海道五十三次の34番目「吉田宿」が栄えたのも、なるほどの地の利です。

● 安久美神戸神明社(あくみかんべしんめいしゃ)


 豊橋公園前に鎮座する神明社では、毎年2月11日に “赤鬼と天狗のからかい”神事で有名な「鬼祭」(重要無形民俗文化財)が行われます。「赤鬼と天狗が対決し、負けた赤鬼はたんきり飴と白い粉を撒いて退散するのですが、その粉を浴びると厄除けになると伝えられているんです」と、平石宮司。豊橋っ子は、この粉にまみれて皆元気に育つんですね。

 御朱印、いただきました。鬼祭り限定の御朱印も人気だとか。

● 御菓子所『絹与』

 旧東海道を辿って散策。吉田宿にて享保十九年(1734年)創業、吉田藩に訪れる参勤交代の諸侯よりお菓子の御用を受け賜わったと伝えられる老舗の羊羹づくりを見学。

 絹与では、毎朝早くから仕込み、じっくりと炊き上げる自家製餡を使用。「小豆の表情を見てつくること」を身上とするだけに、シンプルながら本物の味わいと美しさが際立ちます。九代目杉浦敏二さんから十代目隆仁さんへ、丁寧な職人技が受け継がれています。

 昼食に向かう道すがら、「みたらし」ののれんに引き寄せられるGenbians。餅菓子処『大正軒』は、創業明治9年。名物のみたらしは行列ができるほどの人気で、店先で一本ずつタレづけされていく自動団子焼き機に、一同釘付け。秘伝のたまりを使ったタレの味は、ほんと、たまりませんね!(失礼)

●うなぎ『のぼりや』(ご昼食)

 うなぎ生産量全国第2位の愛知県。とりわけ西尾市一色町をはじめ、豊橋市、田原市など三河エリアは県内最大の産地で、「豊橋うなぎ」は地域ブランドにも登録されています。
 関東と関西とで開き方・焼き方が分かれるうなぎですが、その東西文化の交わる場所が、この東三河地区。豊橋にもかつては養鰻場がたくさんあったそうで、お口の肥えた方が多く、関西風・関東風など様々なうなぎ屋さんがあります。

 今回訪れたのは、大正13年創業の『のぼりや』。厳選した愛知産うなぎを、大正時代から伝わる秘伝のタレでふんわりこんがり炭火で焼く関西風の「直焼き」。今回は到着時間に合わせて鰻をさばき、全員が揃っていただけるよう焼き上げてくださいました。
 甘くて塩辛くて味が濃い」と言われる中部圏の味付けですが、見た目は濃厚そうでも、旨味豊富な“たまり”を使ったきりっとした味わいに、関東から参加の皆さんも大満足でした。

 風情ある魚町通りを散策。この界隈は、戦国武将・今川義元により安海熊野社(やすくまのしゃ)の境内にて魚の売買が許可されたことから、三河湾の豊富な海の幸が集まる魚市場として栄えました。
 鮮魚店「魚伊」の店先に並ぶ旬の地魚にも興味津々。天保年間創業の老舗として、街の台所を支えてきた頼もしい存在です。

● ヤマサちくわ魚町本店

 ヤマサちくわも、文政10年(1827)に吉田宿の魚問屋として創業。魚町本店には、定番商品・季節商品や贈答セット、月替わりの「旬のちくわ」、本店限定販売の「帆立入り焼蒲鉾」などが多彩に揃い、店頭で試食も楽しめます。

 冷凍すり身が主流と言われる練り製品業界の中で、鮮魚にこだわった職人仕込みのちくわや蒲鉾は、「歯ごたえ、風味が違う!」とみなさん太鼓判。関東からの参加者は、「お土産を送りたいから」と、店頭で注文発送をされていました。

● 河合果樹園

 午後からは、無農薬レモンの栽培を全国に先駆けて成功させ、豊橋発の〈初恋レモンプロジェクト〉を展開する、河合浩樹さんの果樹園へ。
 “理想のレモン”を追求し、ひとつひとつ手をかけて高品質の無農薬柑橘類を栽培。全国からの取材や視察のオファーにもなかなか対応できないというお忙しい中、「豊橋の魅力をお伝えできるなら!」と特別に受け入れてくださいました。

 レモン色のユニフォーム姿の河合さんのお話は、そのユニークかつ革新的な栽培方法がたいへん興味深く、食農にも知識豊富な参加者の皆さんから、様々な質問が次から次へと飛び出しました。
 今後河合さんが一押しで展開したいという「レモネーディア」の花は、上品で爽やかな香り。ぜひ果実も味わってみたいものです。


 東海道・二川宿へ向かう車中では、週末だけ限定販売されているという河合さんの無農薬レモン使用した二川名物「初恋レモンかしわ餅 」をいただきました。淡いレモン色の香り爽やかな白あんが、Genbiansの好奇心を刺激したのか、稀少なレモーディアを買うにはどうしたらいいか、どんなお菓子や料理にアレンジできるかなど、誰にも頼まれてもいない?商品開発会議で、車中は盛り上がる盛り上がる!(笑)

「初恋レモンかしわ餅 」

● 二川本陣資料館・本陣

 二川宿は、江戸日本橋から33番目の宿駅。かつての大名の宿「本陣」と庶民の宿「旅籠屋」が現存し、旧宿場町の面影が街並みの各所に残っています。かつての本陣や旅籠を、「豊橋市二川宿本陣資料館」(有料)として整備。二川宿の歴史や近世の旅・交通について、豊富な資料や史跡マップを展示、学芸員の方がわかりやすく解説してくれます。
 宿場で有数の商人だった田村家の店舗兼住居の「駒屋」も一般公開(無料)。本陣・旅籠屋・商家の3か所を見学できる宿場町は、東海道五十三次中、この二川宿が唯一だそうです。

 端午の節句の時期で、立派な五月人形、座敷や軒先に揺れる愛らしいちまきや柏餅のつるし飾りなど、写真を撮るのも楽しいひとときでした。

●「四海王」福井酒造

 GEN-Bなる視察の旅も、いよいよ終着点。豊川の水の恵みのもと創業百余年、「四海王」の銘柄で知られる福井酒造の酒蔵見学へ。

 創業以来、杜氏による手作業を基本とした丁寧な酒造りを続ける一方で、「伝統とは古き力を克服する新しい魂なり」と、最新技術の開発にも果敢に挑戦。「従来の工程を見直し、酒母作りや発酵工程を機械管理することで省スペース化と省力化に成功しました」と、四代目赤井知久会長。昔ながらの製法にこだわりつつ、新しいシステムも導入する柔軟な酒造りは、「全国新酒鑑評会」で7度金賞を受賞し、高く評価されています。

 そのどちらの製法も熟知した杜氏は、中国人の王砿生さん。「日本人以上に日本人らしいお人柄で、酒本来のおいしさを引き出してくれる達人です!」と五代目福井知裕社長。機械化=手抜き=質が落ちる…と固定観念で捉えがちですが、良質な酒造りの技術を継承し続けるためには、そうした常識を打ち破るフロンティア精神が不可欠ですね!

 1日目から濃密な研修ツアーを終えて、宿泊の皆さんはそれぞれホテルにて小休止。客室で真っ先に迎えてくれたのが、「ちくわ煎餅」。佐藤社長のGEN-Bなおもてなしに癒されました。

●「広小路でんでん」

 夜のお楽しみは、三河の食材とお酒のマリアージュを楽しむ宴。東京會舘鈴木直登総調理長をはじめ後半組も、ヤマサちくわ直営店「広小路でんでん」にて合流、賑やかな懇親会となりました。

 酒蔵を見学した福井酒造の「四海王」で乾杯し、特撰ちくわや季節の練り物などヤマサづくしの一皿で口開け。差し出されたのが、ヤマサちくわの主原料となる魚「えそ」のあらを活用し、地元老舗醤油メーカー「イチビキ」と2年の歳月をかけて共同開発した魚醤油「えそ醤油」。すっきりとしたキレと旨みを湛えたコクが、生魚から作られるフレッシュな練り物によく合うこと!もちろん、三河湾の地魚のお造りには言うまでもなく。

八丁味噌煮込みおでんの腰の入った「濃さ」は、見た目に相反してまろやかで熟成された豆の風味が豊かに感じられる逸品。関東炊きに慣れている参加者も、「甘辛くベタベタしていそうなイメージが変わりました!」と、純米吟醸「真」をおかわり。お酌も進んで、疲れも和らぐ至福のひとときを分かち合いました。

 いよいよ、メインイベントは「焼きちくわ検定」。生地を竹に巻いた生ちくわを一人一人手にして、目の前の炭火で焼き目をつけていきます。ぶわあっと膨らんできたところを、竹串で刺してエア抜きさせながら、まんべんなく焼き目をつけていかなくてはなりません。

 焼きちくわのポイントは、焼き色と「シワ」。こんがりつややかなきつね色と、美しい「縦ジワ」が現れるかどうかで検定されます。皆さん手元に集中し、職人のまなざし。焼けたそばから「アチアチ」とちくわを頬張る笑顔は、童心のそれそのものでした。

 「ちくわって脇役のイメージだったけど、生の魚から丁寧に作られた新鮮なものは、料理の主役にもなれるマルチプレイヤーなんですね」。
「温暖で肥沃な土地に育つ三河野菜、豆味噌や醤油、酒などの発酵技術と文化、海の恵みを余すところなくいただく加工技術など、知らなかった食の魅力をたっぷり味わうことができました」。

 そのままで素材の豊かさを味わう、他の食材や調味料と合わせることで新たな旨みを醸し出す。そんな三河の豊橋の懐の深い食の豊かさを、存分に楽しんでいただきました。

 2日目のツアーは、いよいよ「昔も今も変わらぬ旨さ」 その神髄にさらに迫るヤマサちくわ本社工場見学へ!
後半のレポートもお楽しみに。


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