旬のひと・もの・こと特集

第13回 ランチセミナー <後編>[対談]

セルリアンタワー東急ホテル(2022.08.10)

ヤマサちくわ & Japanese Cuisine 桜丘
「穂の国とよはし・東三河の歴史と食文化のランチセミナー」


開催日時 2022年8月28日(日)受付11:30〜 開宴 正午
※現在、満席となっております。
会場 セルリアンタワー東急ホテル(2F)・日本料理「Japanese Cuisine 桜丘」
料金 1名さま 6,000円(サービス料・消費税込)
※事前予約制・当日予約も可 ※宿泊プランあり
内容 佐藤元英氏によるレクチャー/ちくわ焼き上げ体験/日本 料理コースメニュー/日本酒 2種(or ノンアルコールドリンク)
進行 ヤマサちくわ株式会社 代表取締役 七代目社長 佐藤元英
セルリアンタワー東急ホテル 総料理長 福田順彦
桜丘 調理長 鶴田 敬
協力 ヤマサちくわ株式会社
後援 愛知県豊橋市

[特別宿泊プラン]
1室1名さま 21,000円
1室2名さま 32,000円
(イベント参加代ご人数分、室料、サービス料、消費税含む)
※現在、満席となっております。

【セルリアンタワー東急ホテル】
東京都渋谷区桜丘町26−1

ホームページ

創業200年をめざす豊橋名産ヤマサちくわから、
東急グループ創立100周年に向けてエール!

 2022年9月に創立100周年を迎える東急グループのフラッグシップホテルとして、2001年に渋谷駅桜丘側に開業した、【セルリアンタワー東急ホテル】。2021年に20周年を迎え、これを機に“美食を通した文化発信基地をめざす”というコンセプトのもと、日本料理「Japanese Cuisine 桜丘」がリニューアルオープンしました。
 オープン1周年企画として、2022年8月28日(日)、創業より約200年にわたり東海道の発展とともに歩んできた老舗 ヤマサちくわ株式会社(愛知県豊橋市)との初のコラボレーションによるランチセミナーが開催されます。

 監修は、ホテルの食に関する総合プロデューサー役を務めるとともに、東急ホテルズ専務執行役員も兼任する福田順彦総料理長。フランスの食文化普及に貢献した功績が認められ、フランス共和国政府より「農事功労章―シュヴァリエ」(2008)、「農事功労章―オフィシエ」(2018)を受章。令和元年度には卓越した技能者表彰“現代の名工”を受章。日本とフランスの食文化のより豊かな発展と啓蒙のため、「日本エスコフィエ協会」および「フランス農事功労章協会(MOMAJ)」会長も務めています。

 今回初のランチセミナーは、名古屋出身の福田総料理長が、同郷である愛知県のヤマサちくわ株式会社(豊橋市)が自社製造する“すり身”に着目したことにはじまります。自らフランス料理に取り入れ、新たなメニューに活かすなどの経験から、「ぜひとも当ホテル、東京圏のお客様にご紹介したい!」と、同社とのコラボレーション企画へとつながりました。

 開催にあたり、福田総料理長は今回中心となって腕を振るう桜丘 鶴田敬調理長とともに、豊橋市内の同社工場を視察。“鉛は金に変わらない”をモットーに “本物の味”を追求するものづくりの現場と、豊かな東三河産の食材に触れてきました。

● 旬のひと・もの・こと特集
  第13回 ランチセミナー <前編>


豊橋・東三河で出会った食材をフランス料理に!
福田総料理長によるキッチンプレゼン&トーク。

 視察後日、吟味した食材が豊橋から届き、福田総料理長自ら試作メニューを検討。今度はヤマサちくわ株式会社佐藤元英社長が【セルリアンタワー東急ホテル】へと赴き、桜丘 鶴田敬調理長の季節料理のおもてなし、続いて福田総料理長監修のメインキッチンでの試作デモンストレーションに立ち会いました。

 高いトック・ブランシェを被り厨房に立つ福田総料理長は、やはり絵になります!自ら包丁を握る佐藤社長も、広々と大規模な厨房設備に感嘆の声。さっそく食材にも目がいきます。

佐藤: これは豊橋産のエディブルフラワーですね。

福田: はい。私たちが使っているほとんどのエディブルフラワーが、豊橋産、愛知産のものですよ。

佐藤: 豊橋はエディブルフラワーをはじめ、大葉や菊花、しその花穂など「つまもの」の生産が盛んで、特に東三河地域は日本一の産地と言われるほど。古くから温室園芸も盛んで、一年中安定した品質で生産され、全国へと出荷されています。

● 旬のひと・もの・こと特集
  第12回 大葉・青じそ栽培 豊橋温室園芸農業協同組合 大葉部会


 あらかじめ冷やし固めたカラフルなテリーヌを切り出し、ドレッセ(盛り付け)をしていく福田総料理長。よく見てみると、にんじんやズッキーニなどの野菜と一緒に、ヤマサちくわの<ごぼう巻><うずら巻><白はんぺん><いわし玉>などのおでんだねが!
 さらにキューブ状のジュレをちりばめた後、手にしたのは…赤味噌だれ!?

福田: 「おでんのテリーヌ」をつくってみました。

佐藤: なんと!初めて見ました!おでんがこんなに美しいテリーヌになるなんて…その発想がまず凄い。思ってもみませんでした。こんなに洒落た料理にしてもらえて、ちくわも幸せですよね(笑)。

福田: 料理としては至ってシンプルなんです。*あいち鴨でだしをとり、野菜とおでん種の具材を軽く煮込んだだけ。それぞれの味わいや食感を活かして寄せあい、赤味噌を添えれば、フレンチスタイルでありながら、三河のおでんの風味を味わえる一皿になります。

佐藤: (一口味わって)ああ、ほんとだ、これは冷製のおでんですね。ジュレが舌で溶けるとまた美味しくて、味噌だれがソースとしてアクセントになっています。
 うちのおでんにも使用していますが、文久元年(1861)創業の豆味噌、白醤油の醸造元『はと屋(愛知県西尾市)では、百年間使用している杉の木桶で仕込む昔ながらの製法でつくられていて、旨味とコクがあって三河らしい味わいの味噌です。彩りにエディブルフラワーを添えれば、“豊橋スペシャル”の一皿ですね!

*あいち鴨
豊橋市の『鳥市精肉店』が、豊橋市内の2つの農場と独自契約し、ブランド化した県内唯一の地元産合鴨肉。

 続いてオーブンから熱々で運ばれてきたのが、鮮魚からつくられたヤマサちくわのすり身を使った「クネル(Quenelle)」。フランス・リヨン地方の郷土料理で、川カマスなど魚をすり潰し、小麦粉と卵黄、バターなどと練り合わせた生地を混ぜてまとめたもので、日本料理の真蒸(しんじょう)やはんぺんとよく似ています。

佐藤: 熱いうちにいただくと、スフレみたいにふんわりして、そこに濃厚な魚介のソースのうまみがガツンとくる。これはインパクトがありますね!とても美味しいです。

福田: 魚のすり身を使ったフランス料理としてよく知られていますよね。湯の中にそっと落として、液体やオイルを何度もかけてはかけてはゆっくりと加熱していき、そこにザリガニやオマール、ベシャメルなどのソースをかけ、オーブンで焼いて仕上げます。

佐藤: 加熱の仕方が難しいんですよね。表面だけ固くなってしまったり。

福田: そうですね。加減や手がかかるだけに、あまり作る人がいない。昔はレストランでしか食べられない料理のひとつでもありました。

佐藤: 昔料理の本で見て知りました。普通の練り製品では他社と同じになってしまうので、本格的な専門書でいろいろな料理を見て学ぶのが好きだったんです(笑)。

便利さの陰で失われてきたものとは何か、
「手間」をかけることの尊さを見つめ直す。

 近年は、ホテルやレストランが日本各地の特産や名物とコラボレーションをする機会も増えてきました。その土地ごとに育まれ、親しまれてきた風味や味覚、伝統を生かしつつ、料理人として、またおもてなしとして提供する際のポイントや考え方について、福田総料理長にお尋ねしました。

福田: フランス料理、日本料理…といったジャンル以前に、その土地ごとに作られてきた食材や、特に味噌、醤油などの醗酵食は、その地に根ざしてきた「風土の味」「故郷の味」というものがあります。甘かろう辛かろうといった好みもさまざまでしょうけれど、最初から否定するのではなく、私たち料理人はいかに美味しく皆様にお伝えするか、を工夫することが大切です。
その地で採れた素材で仕込まれた味には、何百年もしみ込んだ味の文化がある。それを「変えなきゃ」と躍起になるのは一部の考え方であって、その地を訪れる人にとっては、昔ながらの味を楽しみに、またその味を確認したいという思いもある。その土地の味のヒストリーを大切にすることを忘れてはならないなと思います。

    一方で、伝統をベースにしつつも、新たな感覚や味覚を提供することで話題や感動を喚起し、多くの支持を得てビジネスとして成立させていくことも、飲食業としては大切なこと。ただそこであまり欲張らず、時代に即した変化として逆らうのではなく、自然の摂理として合わせていくといった加減を、うまくバランスをとっていきたいですね。

佐藤: そうですね。自然そのもののあり方も、気温や天候なども含め、環境は大きく変わってきています。野菜にしても、美味しく効率よく作る技術は上がっているけれど、土の匂いやあくなど、本来昔あった風味とはどこか違うなと感じます。魚食文化についても同じで、その土地で獲れていた魚の種類や味わい、また料理に使う材料としても大きな変化を感じずにはいられません。

福田: すり身の作り方にもいろいろあるんですね。まずは鮮度が一番ですし、水揚げされた時の処理の仕方や量で違ってくるのでしょう。
すり身文化は、頭がついた状態以外の魚肉素材を、いかにあますところなく無駄なく生かし切るかを考え、変化をつけたところから始まった、非常に重要な先人の技術です。その中にも今ではピンとキリのものがある。
現在はタイマーやスイッチひとつで、温度調整も精密にできるような便利な機器があるのでしょうが、それがなかった時代は、素材に触れつつ相当な手間ひまをかけて作る工程がありました。ヤマサちくわさんの工場のあの百年以上使われている石臼もそうです。正直言って、あれだけの石臼の数を今揃えているところは、他になかなかないですよ。効率の点ではあの石臼に代わるテクノロジーもあるのでしょうが、食べてみればその差は瞭然かと思います。

佐藤: あの石臼だからこそ、元々の魚の個性が引き立つ、生かせるんです。機械で回すとしつこく練りすぎてしまいがちでね(笑)。食感やアシ(弾力)がなくなって均一なテクスチャに仕上がってしまい、つまらなくなる(美味しくなくなる)んですよ。でもたしかに、あんな非効率な製造はどこもやらないですよね(笑)。

福田: そこなんです。レストランも同じで、先ほどのクネルのような料理を作らなくなったのも生産性が合わないからということ。私はよくお客様に「電化製品を使わず作ったクネルやスフレを召し上がっていただきたい」とお勧めするんですが、「?」という顔をされます。
そこで、「鮮魚をおろして上質な身だけをすり鉢で当てて細かくしていく工程を、ミキサーやかく拌機を使用せず手に豆を作って、料理人が皆で汗をかいて作ったのが、今日の魚料理です」と説明するんです。

佐藤: なるほど。

福田: すると、味の良し悪しはさておいて、「そういった手間ひまが大事なんだよね!」「昔はそうやってどこも作ったもんだよ」なんて、みなさんネクタイを緩めたり腕まくりする人までいたりして(笑)、わあっと一気に食の場が盛り上がるんですね。これもひとつの食の醍醐味です。旨いまずいの議論よりは、「ああ、そういうことを伝えてくれる料理人がまだいた」みたいな。そういう食に対する活気を伝え継げる料理が、今まさにとても大事かなと感じています。
工場でもうひとつ驚いたことは、職人の塩の加減であれだけアシが変化するということ。塩の力って大きいんですね。

佐藤: 入れるタイミングによって塩が上滑りしたり、最終的に同じ量を入れていても塩の研度(かど)が違ってくることがある。毎日作って比較していないとその加減ってなかなかわからないですけれども。

福田: そうした絶妙な加減の職人技で作ってくれている製品を、どう料理に使うか?といった時に、ゴルゴンゾーラやらソースとあわせてああしたらこうしたら…などとやってしまったら、元の素材の美味しさを見失わせてしまいかねません。だしも魚からか家禽からかと悩むところですが、まずは水からだしを取って煮るだけで、そのちくわや練りものに隠された味や調味料などの本来の味がしみ出てくる。そうして仕上がった味こそが嘘偽りのないその食材の味ということです。自然に煮溶けた時の味わいをみなさんに美味しく感じていただける料理としていくのが、我々料理人の次なるフェーズ、仕事なのかなと思っています。

佐藤: 先ほどの2品をいただいて、まさにそう思いました。料理としてまず一目見てかっこいい!美しいのはもちろんですが、肩によけいな力が入っていないというか…すーっと体に自然にはいってくる素直な美味しさに感激しました。あまり肩に力が入りすぎた料理だと、美味しいものも美味しく感じにくくなってしまうんですが、素材から自然にそうした逸品に仕上げる技というか、センスは本当に素晴らしいと感じました。

福田: ありがとうございます。丹精込めて作られ、焼印まで入った完成形で手渡された食材ですから、ゲストが口にした時に「何でこういう形になっちゃったんだ!?」というところまで崩さないよう、本来の大切なところをリスペクトした一品を作るべきかと。とはいっても、練りものの文化を広めていきたいと考えると、一旦ヤマサちくわとしての特徴的な味をニュートラルにさせていただいて、食べる人の舌にやわらかく浸透させながら、おいしいおいしいと感じてもらった先に、「これがヤマサちくわの味ですよ」ともう一度還元、循環していくアプローチもあります。

佐藤: それは高度なテクニックですね!たしかに、試作でも味やテクスチャーを生かして作ってくださっていました。

福田: 味の先入観を一旦取り払い、一切他の調味料は使わず、シンプルな料理で表現することで、どのように感じてもらえるか。今回の企画でも皆様のさまざまな反応を知りたい気持ちはありますね(笑)。
七代目として歴史・食文化を語れるスポークスマンでありながら、「弊社の後継はちくわが作れなきゃダメなんです」とおっしゃるように、佐藤社長ご自身が職人でもある。今回のイベントでは、私が日頃からお客様にお伝えしたいことを、目の前での実演とともに臨場感たっぷりに表現していただける絶好の機会です。練りものなどの魚食文化や東三河の風土の味が、さらに身近なものになっていくのではと、とても楽しみにしています!

佐藤: 豊橋以外では、「社長は作れないだろう」と思われているでしょうからね(笑)。実は作っている時が、一番楽しい!皆さんと和やかなひとときをご一緒できるのを心から楽しみにしています。どうぞよろしくお願いします。

 食を通して、環境問題、自然と食材との関わりについて「考えよう、伝えよう」という姿勢、次世代への食育も含めた取り組み、また、それぞれサスティナブルや食品ロスにもアプローチした*調味料の開発を手掛けるなど、さまざまな面で共感、共鳴し合う福田総料理長と佐藤社長。
 今回のランチセミナーでは、鶴田敬調理長とともに福田総料理長にも、東三河の豊かな実りを活かしたおもてなしの料理を提供していただきます。どうぞご期待下さい。

★ フレーバーソルト「食べるSDGs」(セルリアンタワー東急ホテル)

福田順彦総料理長の「美食で笑顔をお届けする」の理念のもと、また「料理人としての社会的責任」の観点で取り組めることとして開発。フランス料理の原点である「フォン」、日本料理の「出汁」、野菜の旨味を活かした3種のフレーバーソルトを販売。

★ 「えそ醤油」(ヤマサちくわ株式会社)

ヤマサちくわの味を支える欠かせない食材「えそ」。廃棄部分を有効活用し、その旨みを余すところなく引き出すべく老舗の醤油メーカー「イチビキ株式会社」と共同開発して生まれた、新感覚の魚醤。料理王国100選2018認定品


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