第11回『豊・食・人 GEN-B』交流会
「~伝統の練りもの×スパイスの魔法 極楽寺・アナンとの出会い~」
| 開催日 | 2026年2月8日(日)11:00〜14:00(ランチ終了まで) |
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| 場所 | アナン邸 〒248-0023 神奈川県鎌倉市極楽寺2丁目6-14 電話番号:0467-25-6416 https://www.e-anan.net/ オンラインストア:https://internetofspice.com/ |
| お話 | 佐藤 元英(ヤマサちくわ株式会社 七代目社長) https://www.yamasachikuwa.com/ メタ・バラッツ(アナン株式会社/スパイス料理研究家) http://www.e-anan.net/ |

食いしんぼうGEN-Bではおなじみ、ヤマサちくわの創作おでんが月替わりで楽しめる頒布会『でんでんおでんの会』。多彩なラインナップに本格スパイスを使った〈鎌倉スパイスカレーおでん〉が登場したのは、2022年のことでした。
スパイス専門商社『アナン株式会社』三代目、メタ・バラッツ氏監修のもと、ヤマサちくわの練りものに合うスパイスを使った、独自のカレーおでんを共同開発しました。
さらにバラッツ氏とは、コロナ禍でのオンライン講座をはじめ、豊橋で親子向けのスパイスクッキングなど、〔コラボ特別授業〕を重ねてきました。




そんなご縁が続いて、2026年2月神奈川県鎌倉市・極楽寺にある古民家『アナン邸』にて、待望のGEN-B交流会を開催することができました。


毎年2月は寒波の時期。この日も前日からの予報通り全国的に雪模様で、朝の鎌倉は一面の雪化粧でした。降り続く中にもかかわらず、ほとんどの参加者が無事にアナン邸へ足を運んでくださいました。



100年を超える古民家の大広間で、まずは暖を取り、お茶を一服。愛知県豊橋市で199年にわたり練りものの伝統を守ってきた「ヤマサちくわ」七代目・佐藤元英社長と、鎌倉を拠点にスパイスの可能性を広げる料理研究家、メタ・バラッツ氏によるホットな一日が幕を開けました。


GEN-Bは、「海に囲まれ、森に育まれた恵み多き日本の食文化を、より豊かに和やかに味わい、“ほんものの美味しさ”を次世代へ伝えたい」という佐藤社長の思いから、2017年に発足しました。2027年にはヤマサちくわ創業200周年を迎え、GEN-Bも10年目に入ります。
まずは佐藤社長によるレクチャーから。
| 佐藤: | ヤマサちくわの歴史は、江戸時代末期の1827年(文政10年)に遡ります。その原点は、今川義元公が豊橋の「魚町(うおまち)」に築いた大きな魚市場にありました。 かつて東海道の吉田宿として繁栄した豊橋は、人口5,000人の町に3,000人の飲食店関係者がいたといわれるほど、食が豊かな地域。そんな中、初代・佐藤善作が四国の金比羅参りで出会った「ちくわ」に感動し、豊橋で作り始めたのが今日に至る始まりでした。 |

また、信州へとつながる「塩の道」の歴史にも触れました。
| 佐藤: | JR飯田線沿いには、かつて「塩の道」があり、昔はちくわの穴にも塩を詰めて、塩漬けにして運んだんです。そうすると塩が水分を吸って、カチカチに乾燥します。それを水に浸すと、カップ麺の具材みたいに元に戻るわけです。魚の流通のなかった山間地域の人たちにとって、それは貴重なご馳走でした。 |
この時代にも「なんとしても美味しく食べたい!」というGEN-Bの食いしんぼう精神が!こうした熱い思いが、今の豊かな食文化を支えてきたのですね。


ヤマサちくわが求め続ける“ほんものの美味しさ”。その鍵は徹底した原料選びと、昔ながらの「石臼」にあります。
| 佐藤: | 今でもグチ、エソ、ハモといった生の魚を、頭のついた状態から仕入れ、職人が手さばきをします。下処理を施した後は、100年以上使い続けている石臼ですり潰すします。その際の塩の“あんばい”によって魚のタンパク質がアクトミオシンという物質に変わり、あの独特のアシ=弾力が生まれます。石臼の表面にある目に見えない凹凸。これが、カッター機械では絶対に出せない絶妙な風合いを生むんですよ。 |


原料からこだわるすり身づくりこそが、ヤマサちくわの“ほんものの美味しさ”を支える骨格です。本来の製法とも、魚本来の美味しさとも異なる製品が安価に並ぶ今、そこに一石を投じたい。その思いが製品へのこだわりとなり、「ちょっと高くても美味しいから食べたい!」というファンの心と胃袋をつかんでいます。



伝統を重んじる佐藤社長が、新しい可能性を感じたのが、メタ・バラッツ氏が提言する「スパイスの魔法」でした。
| 佐藤: | 「もっと美味しいカレーおでんを作りたい」という思いから始まった共同開発ですが、そこで教わった、スパイスを油で炒めて香りを引き出す「テンパリング」という手法は、我々練りもの屋にとっては、非常に新鮮な驚きでした!香りを引き立てたスパイスを使うカレーおでんは好評で、今年も6月のメニューに登場しています。 |



バラッツ氏からは、まずスパイスの起源や種類、インドにおけるスパイスのある暮らしや文化についてお話しいただきました。その後は、キッチンに場所を移して、いよいよスパイスカレー調理講座の始まりです。
「スパイスは“香り”であって、実は”味”ではないんです」と、バラッツ氏。スパイスの油分は熱で揮発して香りを生み、そこに塩が加わって初めて、私たちはそれを「美味しい味」と認識するのだそうです。


| バラッツ: | 用意したのは、ターメリック、コリアンダー、クミン、カシミールチリの「基本の4スパイス」。ベースさえできれば、ほとんどの種類のカレーにアレンジが可能です。 ターメリック「1」に対し、コリアンダーとクミンを「3〜5」。これが誰でも本格的なカレーの香りが作れるという「黄金比」です。さらに今回は、体を温めるジンジャーパウダーや、複雑な深みを出すガラムマサラ、そして「指を舐めるほど美味しい」とされるミックススパイス、チャートマサラを隠し味として加えます。 |
ずらりと並ぶスパイスをひとつひとつ嗅いで、その芳香を体験しました。「全然違う!」「これこれ、カレーの香り!」と声が上がります。

一番重要なのが、スパイスの香りを最大限に引き出す「テンパリング」という工程です。精製バター「ギー」や「米油」を熱し、そこにホールスパイスを投入。パチパチとはじける音とともに、一気にエスニックな香りが立ち込めます。
| バラッツ: | 油の中で熱しないと、スパイスはただの黒い粒のまま。こうして香らせることが、スパイスの可能性を解き放つ儀式なんです。そこに、ニンニクと生姜をペースト状にした「GGペースト(ジンジャー・ガーリック)」を加え、水分を飛ばしながら香りをなじませていきます。このベースさえ作っておけば、あとは肉や野菜、そして「練り物」を加えて伸ばすだけで、無限のバリエーションが生まれますよ。 |




自身のインドでの体験談も交えて「スパイスの力」を説くバラッツ氏。
| バラッツ: | 「インドでは、味噌汁を出すと半分くらい残されますが、ラーメンは完食します。何が違うかというと“一口目のパンチ”。スパイスの刺激が最初に来ることで味覚がパッと開き、その後の旨みをより深く感じられるようになるんです。 |
バラッツ氏が「ヤマサちくわ」に最も合うと薦めるスパイスは、「チャートマサラ」。酸味と塩気が絶妙なこのスパイスを焼きたてのちくわに振りかけると、おつまみとしての魅力が爆発するとのことです!



今回は鳥取県大山町の『CURRYRICEnoGOHANーカレーライスのゴハンー』汐田英徳さんが、農薬・化学肥料を使わずに栽培したカレーライス専用米〈プリンセスかおり〉を届けてくださいました。インドの高級米「バスマティ370」の香りを受け継ぐ「プリンセスサリー」と「コシヒカリ」の希少な品種「いのちの壱」をかけ合わせて誕生したお米です。
バラッツ氏は、「せっかく素晴らしいお米とちくわが出会ったので、新しいメニューを作りましょう!」と、「ちくわスパイスごはん」を急遽追加!ギーとスパイスの香りをまとわせたごはんに、豊橋名産ヤマサの「ちくわ」を輪切りにして贅沢に加えました。

豊橋市から届いたキャベツ、みかん、いちごなどの「こだわり野菜セット」は、キャベツのココナッツ炒めや、みかんと大根の爽やかな副菜など、多彩なスパイス料理へと変身しました。

その間、一面雪景色の庭では炭火が起こされ、縁側では佐藤社長自ら、すり身を竹の棒に巻き付ける「手巻き」を実演。雪のように白いすり身に褐色のスパイスを練り込んだちくわは、この日のために用意された特別な「鎌倉カレースパイス味」でした。手仕事で練り上げられた魚の旨味に、アナンのスパイスが溶け合う、まさにここでしか味わえない逸品です。




参加者も順に、雪が舞う中、炭火にあたりながら、おひとり2本ずつ竹の棒を手にちくわを炙ります。
「熱い、いい匂い!」「膨らんできた!」
焼きたてを頬張ると、魚の滋味と炭火の香ばしさが口いっぱいに広がります。氷点下の屋外でも、自分で焼き上げる喜びと焼きたての熱に、心も体も芯から温まりました。










キッチンでは、お待ちかねの特製スパイスプレートが完成!屋内に戻り、ランチタイムの時間です。配られたプレートには、色鮮やかな「ココナッツチキンカレー」。バラッツ氏が「練り物の塩気を計算して、塩は控えめにしています」と語る通り、ちくわや揚げはんぺんから染み出した魚の旨みが、スパイスと見事に調和しています。
ちくわごはんを頬張ると、「ちくわとスパイスがこれほど合うなんて」と驚きの声が。佐藤社長も一口食べ、「ちくわとスパイスとの相性にあらためて驚きました!」と目を細めました。



この特別なひとときに彩りを添えたのが、鎌倉・長谷の醸造所「鎌倉ワイナリー(ドメーヌナツメ)」の安部夏生氏が持参した、できたてのスパークリングワインです。
「小田原の契約農家さんのぶどうを、鎌倉で醸造しました。今年の新酒です」
安部氏が注ぐフレッシュな泡は、焼きたてのちくわの脂を心地よく洗い流し、次の一口を誘う美味しさでした。


デザートには、佐藤社長の地元・豊橋の洋菓子店とのコラボで生まれた〈と・と・たま〉。上質の魚のすり身、濃厚な豆乳とチョコを練り込んだ“目からウロコ”のスイーツは、練りものの可能性が無限であると感じさせてくれる注目のスイーツです。


ランチの締めは、温かいマサラチャイ。バラッツ氏が丁寧に煮出した一杯は、カルダモンや生姜がやさしく香り、心身をおだやかに温めてくれました。
「皆さんのご家庭でも、練り物とスパイスの組み合わせをぜひ楽しんでみてください。また新しい食卓の会話が生まれるはずです」とバラッツ氏。特別にブレンドしたスパイスパウダーと〈と・と・たま〉アソートのおみやげも、嬉しいサプライズになりました。

併設のショップでは、スパイス商として歴史あるアナンオリジナルのスパイスや「カレーブック 」も大人気。作り方のレクチャーは、バラッツ氏が主宰する「スパイスカレー教室」や、遠方でもキットが事前に届く「オンライン料理教室 つきいちスパイスカレー」がおすすめです。
● もっとスパイスを楽しもう アナン料理教室




今回この同日、JR鎌倉駅前の『まちの社員食堂』でも、「発酵×スパイスマルシェ」が開催されました。ヤマサちくわの美味しい練りものや東三河の新鮮な野菜が販売され、多くの方が立ち寄ってくださいました。ランチには「三河の味噌おでん」も登場し、鎌倉の地で豊橋の伝統の味を楽しんでいただきました。




伝統とは、守るだけでなく、混じり合いながら新しく生まれ変わっていくもの。GEN-Bが目指す「食を通じた交流」に、またひとつ新たな実りが加わりました。
次はどんなコラボレーションが生まれるか、スパイス好きには、目が離せなくなりそうです。
まずはぜひ、『でんでんおでんの会』6月限定販売の〈鎌倉スパイスカレーおでん〉をお楽しみください!
