活動レポート

四谷の千枚田(愛知県新城市)

豊・食・人 GEN-B 田植えツアー2025

開催日 2025年5月10日(土)~11日(日)
場所 遠州舞坂の海の幸と東海道名所巡り/奥三河・四谷千枚田での田植えと奥三河観光
ご案内 ヤマサちくわ株式会社 七代目
代表取締役 佐藤元英
https://yamasa.chikuwa.co.jp/

泥んこの足と、ちくわと、美味しい笑顔。 4年目のGEN-B田植えツアーも大満福!

 薫風が心地よく吹き抜ける5月、今年も恒例の「豊・食・人 GEN-B 田植えツアー」が1泊2日で開催されました。
 愛知県新城市の美しい棚田「四谷の千枚田」での田植えが主な目的ですが、食いしんぼうGEN-Bの旅はもちろんそれだけでは終わりません。三河の地の様々な生産者や料理人の方々の想いに触れながら、食や農の尊さを学び、楽しみつつ、お腹も心も満たされる特別な2日間となりました。

【1日目】 遠州・浜松を出発点に、 食いしんぼうたちの東海道味めぐり。

 今回の旅は、静岡県浜松駅からスタートです。1日目は、遠州・浜松から東海道を下り、宿場町を巡りながら吉田・豊橋へ入るというコースで、東三河の魅力を感じてもらえるよう企画。東から西から参加者の皆さんが集合し、「まずは腹ごしらえ!」と向かったのは、舞阪にある活魚料理が有名な老舗日本料理店『魚あら』。漁師だった創業者が大正元年に創業、かつてはヤマサちくわが魚を仕入れていたという、ご縁の深いお店です。

 目の前に運ばれてきた揚げたて熱々の海老天丼は、丼から溢れんばかり!甘辛のタレがしみ込んだ衣をまとったぷりっぷりの海老の甘みに、思わず歓声が上がります。そして、皆が「これは何!?」と感動したのが、この地域ではおなじみという〈あおさの甘酢〉。磯の香りとまろやかな酸味の絶妙なバランスが初夏にぴったり。あまりの美味しさに、食後限定販売のまぐろカマ煮とともに皆で買い占めてしまうほどでした。
 さらに、近所のしらす屋さんを紹介していただき、海苔や釜揚げしらすを追加でお買い物。「美味しい!」「食べたい!」と思ったら、その衝動には抗えないのがGEN-B気質なのです。

 お腹が満たされた後は、歴史の旅へ。舞阪を出発し、新居の関所、豊田佐吉記念館、二川宿と、江戸時代の風情を感じつつ東海道を下っていきます。新居関所・資料館では、この地がかつて吉田藩のお膝元であった歴史を学び、往時を偲びます。新居宿旅籠紀伊国屋資料館豊田佐吉記念館は、いずれも見どころ満載。東海道の歴史の理解がより深まりました。

 道中、「白須賀が柏餅発祥の地」という話が出ると、「やっぱり食べなくては!」と二川の老舗和菓子屋『中原屋』に直行。お買い物熱もヒートアップ。こうした柔軟軽快な行程も、GEN-Bツアーの大きな魅力です。

 かつての吉田宿・豊橋に入ると、旧東海道沿いの呉服町に店を構える『御菓子所 絹与』へ。1734年創業(享保19年)、北海道産小豆など厳選した材料を使い自家製餡から作る羊羹が名物の老舗です。

● 旬のひと・もの・こと特集 第9回 豊橋銘菓【御菓子所 絹与】


 お目当ては、夏限定の〈氷菓子あずき〉。しゃりっとした氷菓の食感と、ふっくらと炊きあげられた小豆の優しい甘さは格別です。この味を「里帰りの味」だと語るリピーターもいらっしゃるほど。クールダウン後は、魚町『ヤマサちくわ本店』とご当地スーパー『サンヨネ』で、地域の味をお土産にとお買い物を楽しみました。

 夜は、ヤマサちくわ直営店『広小路でんでん』にて、豊橋・東三河の旬の食材満載の特別メニューを囲みました。この日のメインは、豊橋が日本一の生産量を誇るエディブルフラワー(食用花)のカーネーションをふんだんにあしらった〈豆乳花鍋のしゃぶしゃぶ〉。その華やかな見た目と優しい味わいに、テーブルは和やかな雰囲気に包まれました。

 自分で炭火で焼くちくわ焼き体験や、旬の魚介類などお料理に合わせて〈真澄 スパークリング〉はじめ日本酒もペアリングで楽しんでいただきました。翌日の田植えに備え、しっかり英気を養いました。

【2日目】〈日本の棚田百選〉奥三河の至宝 四谷千枚田から次世代へ継ぐ想いと汗の結晶。

 田植え当日は、早朝から豊川沿いを走り抜け、新城市の四谷千枚田へ。車から降りると目前には、日本の原風景と呼ぶにふさわしい美しい扇状型の棚田が、我ら一行を迎えてくれます。1年ぶりの風景に「ただいま」の記念撮影。リアルなかかし達もお元気そう。

案山子 写真提供:鞍掛山麓千枚田保存会

 この貴重な棚田の保全に長年尽力されているのが、『鞍掛山麓千枚田保存会』の皆さん。平成9年の発足以来、精力的に活動を続ける小山舜二会長、原田英史理事をはじめとする地元有志の方々の地道な努力が、“奥三河の至宝”と称されるこの景観を支えています。

 田植えを前に、小山会長からご挨拶と千枚田の近況を伺いました。

小山: 今年もおいでいただきありがとうございます。近年はですね、皆さんが一生懸命作っている米があまりにも美味しいので、猿や鹿が食べることを覚えちゃったんです。集団でやって来ては、ようやく育ってきた稲の穂先をきれいに食べてしまう。はざ掛けをした稲穂も、引っこ抜いて食ってしまうんです。その被害がまあすごくて、柵をしてもおかまいなし。向こうも賢いもんで、毎年知恵比べです。
私も朝5時から田んぼに来て、獣害対策をしたり、農作業以外にもお茶工場などの仕事もしていますので、家に戻るのは夜中になることも珍しくありません。それだけ働きづめでもね、資材や肥料も軒並み高騰していますし、千枚田の米はいくら頑張ったって原価計算したら全然儲からないんです。一体何のためにやっているのか、と思う日もあります。

 会長のその言葉は、単なる苦労話ではなく、日本の多くの山間地域が抱える構造的な課題を浮き彫りにするものでもあります。しかし、そんな過酷な状況でも、会長が情熱を注ぐのは、次世代への「食育」のために他なりません。

小山: 地元の小学校で稲作体験を続けているのは、未来を担う子供たちに、食の原点をぜひ知ってもらいたいからです。また、将来食のプロになる子達にも、食の大事さ、一粒の米の本当の大切さを、ここで学んでほしいんです。
お茶碗1杯のご飯が、どれくらいの苗からできるか知っていますか?1杯分が約3,500粒として、それだけのお米を収穫するために必要なのは、「2株」の苗。春に2本の苗を1セット(1株)植えると、稲は「分けつ」をして20本以上の稲穂に増え、「二株(合計4本の苗)」で、お茶碗一杯分をゆうに超えるお米が収穫できるというわけです。

写真提供:鞍掛山麓千枚田保存会

 たった数本の苗が、私たちの毎日の食事を支えている。会長のお話は、目の前の一粒のお米への感謝の気持ちを、改めて思い出させてくれました。

小山: ヤマサちくわ 佐藤社長をはじめ、こうして毎年GEN-Bの皆さんが応援に来てくれることが、我々にとって何よりの励みと力になります。特に佐藤社長にはもう長年にわたってこの千枚田の保存に大きな理解を寄せてくださり、本当に感謝しています。

 自分ら地元の人間だけでは、高齢化も進み、この棚田を維持していくのは年々困難になっているのが現状。でも多くの方々がここを訪れ、一緒に汗を流してくれるなど、そうした応援があってこそ、この景色は守られていくのです。

 会長の熱い思いとともに、この美しい棚田を守り、美味しいお米を未来に伝えたい。その想いは私たちの心に深く刻まれました。

いい汗をかいて、ちくわにかぶりつく! お昼は古民家中華へ、リクエストで再訪。

 鯉のぼりが風に泳ぐ中、田植え開始。このツアーも5年目となり、何度か参加されている皆さんは随分と手慣れたもので、列を成しての手植えの息もぴったり。初参加の方も、ベテランに教わりながら、4枚の田んぼを驚くほどのスピードで植え終えることができました。

 泥だらけの足と、心地よい疲労感。玉汗をぬぐい、足の泥を落としたら、ヤマサちくわが全員に配られ、ガブリと丸かじり。「おいしーい!」といつもの笑顔がはじけて、程よい塩分とタンパク質を補給にもなりました。

 それでも奥三河の新緑の中をドライブするうちに、お腹はぺこぺこです。お待ちかねの昼食は、リピーターの方々から熱烈リクエストをいただいていた古民家中華菜館『玖老勢蘭華』(新城市)へ。
 〈あいちの名工〉愛知県優秀技能者知事賞にも選ばれた渡辺光司オーナーシェフご夫妻が、食材、調味料からこだわり抜いた中華料理と、インテリア、器のひとつひとつにもセンスが光る大人の隠れ家レストランです。

 この日は、田植え後の参加者のために、特別に貸切で営業してくださるとのこと。伝統的な製法を用いて作られる自家製の醤(ジャン)を使い、紙パックに入った季節の食材をシャカシャカと振って混ぜ合わせたり、自家製の皮に包んで北京ダック風にいただくなど、食べる楽しさに溢れたメニューに全員疲れを忘れて舌鼓!地元の新鮮な食材を、ヘルシーに活かした本格四川料理は、どれも滋味深く、農作業で疲れた体に優しく染み渡ります。

 シェフの料理への真摯な姿勢と奥様の温かいおもてなし、センスに溢れた器やインテリアなど、何度訪れても新たな感動に満たされます。“遠方からでもわざわざ足を運びたい”GEN-Bとっておきのお店です。

 午後からは、山全体が国の名勝・天然記念物の鳳来寺山へ。標高695m、山の中腹にある鳳来寺までは、ちょっとしたハイキング。木立ちに囲まれ、いかにも古刹の風情です。“声の仏法僧”とも呼ばれる愛知県の県鳥・コノハズクが棲息していることでも知られ、今から約1,300年前(703)に利修仙人によって開山されたと言われています。

 麓から1425段の石段が続く長い鳳来寺の参道には、樹齢800年、高さ60mにもなる傘杉などの見どころがあり、石段を上るごとに広がりを見せる奥三河の自然の風景は癒し効果絶大。徳川家光公によって慶安4(1651)年に建立された仁王門は国の重要文化財となっています。(愛知の講師観光ガイドAichi Now より)

 慶安4年4代将軍家綱公の時代に完成した東照宮に参拝し、新緑の中で深呼吸してリフレッシュ。帰り道には、直売所『こんたく長篠』に立ち寄り、名物の鳳来牛を買い求めたり、さらに満腹!五平餅を味わうツワモノまで!最後まで食への探求心は尽きることがありません。

 豊橋駅で解散となった後も、一部の有志は駅ビル内のヤマサちくわ直営店『ねりや花でん』で味噌おでんを堪能したと後日報告が!GEN-B隊長の佐藤社長も脱帽の食いしんぼうぶりは、あっぱれ!の一言に尽きます。余すところなく満喫した2日間のツアーでした。

写真提供:鞍掛山麓千枚田保存会

 この日植えられた苗は、その後の猛暑にも耐えながら順調に生育していると、ヤマサちくわの圃場の画像とともに小山会長から嬉しいご報告がありました。毎年のことながら、保存会の皆さんが暑い中も丹念にお世話をしてくださるおかげです。いつもありがとうございます。

写真提供:鞍掛山麓千枚田保存会

 秋に収穫される新米は、セルリアンタワー東急ホテル『Japanese Cuisine 桜丘』で開催される「穂の国とよはし・東三河の歴史と食文化のランチセミナー」にて、地域の素晴らしい食材とともに提供される予定です。

● ヤマサちくわ & Japanese Cuisine 桜丘

大好評シリーズ

新米の恵みをあじわう

 都市と農村が連携し、互いの価値を認め合いながら、食と農の未来を共に創造していく。こうしたGEN-Bの取り組みが、その一助となれば嬉しい限りです。
 次回の稲刈りツアー(9月13日(土)・14日(日))に開催を予定しています。黄金色に実った稲穂と、皆さんの笑顔にまた再会できることが、今から楽しみです。ぜひふるってご参加ください。

● 四谷の千枚田(愛知県新城市)豊・食・人 GEN-B 稲刈りツアー2024


〈2025の秋も!稲刈りツアーが決定!〉

日時/2025年9月13日(土)~14日(日)
参加費/30,000円(棚田オーナーは、28,000円)
詳細は、いましばらくお待ちください。


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