GEN-B 旬の料理帖

旬の素材【ちくわ】 #01

暑夏に元気を贈る!「氷室ちくわ」の風習。

  日本は海に四方を囲まれた島国。北から南まで、冷凍技術が今ほど発達していなかった昔は、その土地で獲れる魚種を原料に、さまざまな風味のかまぼこやちくわがつくられていました。

 豊橋ちくわ発展の要因のひとつとなったのが、江戸時代に吉田宿(豊橋)から「塩の道」を使い、信州へとちくわを運ぶために生まれた「塩漬けちくわ」と言われています。ちくわの穴に塩を詰め、さらに上からも塩を振り、1日でも長く保たせるようにとの工夫でした。

 現代では、冷蔵の技術により、年中新鮮な魚類をどこにでも運べるようになりましたが、実は奈良時代より、冬場にできた天然の氷を溶けないよう「室」を作って保管する「氷室(ひむろ)」という知恵がすでにありました。

 江戸時代、加賀藩では冬の間に氷室に貯蔵しておいた氷を旧暦6月1日(現在の7月1日)の「氷室の節句」に、江戸幕府へ献上していたと伝えられています。これにちなみ、金沢では7月1日に、氷に見立てた「氷室饅頭」や青竹を芯にした「氷室ちくわ」を食べる風習が残っています。

 竹にすり身を塗りつけ、直火で焼き上げるちくわ。竹には殺菌作用があることから、金沢では暑い時期の無病息災を祈って、お嫁さんの実家から嫁ぎ先へと贈る習慣もあるそうです。

 ヤマサちくわのお膝元、豊橋市の安久美神戸神明社(あくみかんべしんめいしゃ)でも、毎年6月晦日(30日)に「夏越の大祓(おおはらい)」が行われます。暑さを無事に乗り越え、ともにすこやかにと願う気持ちは、どの地も同じ。今年の夏は、そんなエールをちくわに託して贈ってみませんか。

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