GEN-B 旬の料理帖

旬の素材【土鍋】 #06

ほっこり、旬の食材にもやさしくあったか。

 厚みがあって、どっしりと落ち着いた佇まい。土の風合いも豊かで、旬の恵みを懐深くたっぷりと受け止めてくれるおおらかさがある。直火にかけられ、そのまま食卓に据えてもいつまでもほかほか、湯気とともに団らんの中心となってあたたかく和ませてくれる。「ほっこり」という言葉が、これほど似合う鍋もほかにないでしょう。
 “ぐつぐつ”と煮立てるのではなく、遠赤外線効果で食材の芯までおだやかに熱を伝え、余熱で味を浸透させると同時に食材の旨みも引き出してくれる土鍋は、弱火で“ことこと”煮る「おでん」にうってつけ。沸騰した時の“ぶくぶく”で具(たね)が煮くずれるなんてこともありません。ちくわやはんぺんなどの練りものは、煮込みすぎず最後に加えるのが美味しくいただくコツ。土鍋の蓋を開けた瞬間の湯気もご馳走です。
 近年は土鍋の万能な魅力が見直され、ごはん炊きや蒸し料理もすっかり定番に。とりわけ“呼吸する土”と言われる伊賀の粗土を使った*伊賀焼の土鍋は、耐火度が高く、料理人からも厚い支持を得ています。
 まだまだステイホームが大切な日々。実り豊かな旬のおとりよせ素材を手軽にシンプルに、しかも最高に美味しく味わえたら、家族の笑顔もお月様のようにまんまるく、ぱあっと明るくなりますね。

*伊賀焼『長谷園』 https://www.igamono.co.jp/about/index.html :天保3年(1832)、陶土と森に恵まれた三重県伊賀市に築窯。現代の生活スタイルに調和した「今に生きる民具」として、調理の用途に応じた土鍋を手がける。

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