GEN-B 旬の料理帖

旬の素材【わさび】 #17

海外でも推しのスパイス「WASABI」。

 「つーん」と表現される独特の辛味と爽やかな香味。昔から魚を生食してきた和食文化において、「わさび」は生臭さを消し、淡白な味わいに風味をつけたり、抗菌作用もあるとして重宝されてきました。鮨や蕎麦はもちろんのこと、蒲鉾と味わう“板わさ”、ちくわにわさび漬など、練りものとの相性も格別です。
 その歴史は古くは飛鳥時代にまで遡り、日本最古(918)の薬草事典『本草和名(ほんぞうわみょう)』には「山葵」と記載、平安後期には香辛料として食用されるようになりました。主に山間部の渓流地に自生しますが、江戸時代初期に静岡県有東木(うとぎ)で栽培されたのが始まりで、徳川家康にも称賛され、1774年に幕府の庇護のもと伊豆天城で本格的な栽培が始まりました。
 現在の日本の主な産地は静岡県、長野県、東京都(奥多摩)、島根県など。日本原産の固有種、アブラナ科ワサビ属の多年草で、「本わさび」として西洋わさびと区別されることもあります。一年中収穫できますが、辛味成分のイソチオシアネートが多く含まれる冬が香り高く美味しいとされるほか、葉が柔らかく香りも豊かな春〜夏、茎が太く柔らかい夏〜秋など、部位によっても旬は異なります。現在は水耕栽培(水わさび)だけでなく、土耕栽培(畑わさび)もされています。根茎はおろしわさびに、また茎や葉、花なども食され、特に茎や葉は「わさび漬」として、静岡県や長野県の名産となっています。
 暑くなる季節、食欲増進や防腐の効用もあるわさびをいつもの料理に添えて、さわやかにすこやかに乗り切りましょう!


[株式会社 田丸屋本店]
明治8年(1875)創業、静岡名産「わさび漬」をはじめとするわさび製品の総合メーカー。初代が当時の陸蒸気に着目し駅の立ち売りをしたことから、東海道線を通じて“静岡の名産品”として全国にその名が広まりました。同じ東海道線の豊橋名産「ヤマサちくわ」とのコラボレーションも50周年。

● GEN-B特集 旬のひと・もの・こと [対談]

旬のレシピ

  • 料理制作:フードコーディネーター 岡嶋芳枝(yoshie okajama)
  • 料理撮影:フォトグラファー 三浦藤一 (toichi miura)
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